東芝 超電導電磁石を利用した荷電粒子加速器

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重粒子線治療は外科治療に代わるがん治療として期待が寄せられている一方で、普及の障壁となっているものの一つが装置が大型、重量であることが挙げられます。

放医研のHIMACという重粒子線治療装置が完成してから、軽量、小型化に向けた開発が行われてきました。

小型化、軽量化を実現するための方法の1つである、超電導電磁石を用いた加速器について今回は注目してきます。

重粒子線治療装置の構成

重粒子線治療施設の大きさはサッカー場ほどの大きさになるのですよね。

構成の概略と、必要となる技術をまとめたのがこちら。

今回ご紹介する特許

今回注目するのは「加速器」の小型化を実現した東芝の特許です。

発明の名称:「超伝導マグネット装置および荷電粒子加速器」

特開2015-153733

発明者:折笠朝文氏、土橋隆博氏

 

超電導とは?

特許を見る前に、「超電導」という概念とは何か知る必要があります。

超電導とは、金属や化合物などを非常に低い温度まで冷却したときに、電気抵抗がゼロになる現象をいいます。

人間ドッグで行うMRI検査装置にも使われている技術ですね。

例えば、ボールを転がすとやがて止まりますよね。これは摩擦の働きによるものですが、もし摩擦がなければボールはいつまでも転がり続けます。同様に、電気を流れにくくする抵抗が存在しないのが「超電導」状態です。つまり、電気が流れやすくなるということです。超伝導と表記されることもありますが、ここでは超電導で統一します。

どれくらい低温にすると超電導状態になるかというと、約-270℃になります。

 

重粒子線治療装置の流れ

マインドマップにも記載していますが、重粒子線治療は次のような流れになります。

①イオン源から炭素イオンを生成

②線形加速器で光速の約10%まで炭素イオンを加速する

③リング状のシンクロトロンで炭素イオンを光速の約70%まで加速する(これは地球を1秒間に5回転する速度です)

④各治療室に送る

 

加速器のなかで起こること

東芝の特許のポイントは構造にありました。

まず、加速器の中で起こることですが、

粒子発生源から放出された荷電粒子(3)が真空ダクト(2)の中を進むとき、コイルにより形成される磁場によって、荷電粒子の軌道が調整されます。

本発明のコイルでは、下図のように、

ソレノイドコイル(水色)の内側にはB1方向に磁場が形成され、

鞍型コイル(ピンク色)は対向配置されているため、一方がN極、他方がS極の磁場を形成します(磁場B2)。

これにより、磁場B1が荷電粒子を軸線方向に沿う方向に向け、磁場B2が荷電粒子の軌道を偏向させています。

このとき、磁場が形成されるため、電磁力が発生します。この電磁力によるコイルの変形方法を工夫したのが本発明のポイントの1つでした。

 

下の図は、1つ目が従来の加速器、2つ目が本発明の加速器を表しています。

↑従来の加速器

↑本発明の加速器

 

水色がソレノイドコイル、ピンク色が鞍型コイルです。

従来のものは、ソレノイドコイルと鞍型コイルが分かれて配置されていますが、東芝の特許では、ソレノイドコイルの外側に鞍型コイルが配置されていますね。

この違いがどんな変化を生むのでしょうか?

 

発明のポイント

コイルの断面図を見てみます。

これは従来の加速器におけるソレノイド、鞍型コイルそれぞれの断面図です。

黄色にご注目ください。これはサポート筒で、コイルから外側に向く電磁力F1、F2によりコイルが変形するのを防ぐために配置されています。

下のコイル内部にある緑色サポート筒です。同様に、コイルから内側に向く電磁力F3によりコイルが変形するのを防ぐためのものです。

このように、従来の加速器では、それぞれのコイルを別々に配置しているため、変形を防止するサポート筒を計3箇所に配置しなければいけませんでした。

 

これは今回の発明における加速器のコイル断面図です。

 

黄色にご注目ください。従来型の図のように、コイルが励磁されると、電磁力F1、F2がそれぞれ外側に働きます。コイルの外側にサポート筒が設けられていますが、1箇所だけですよね。

そして、鞍型コイルから内側に向く電磁力F3を、ソレノイドコイル(水色)が受けることができるため、内側のサポート筒が不要になっていますね。

これが本発明のポイントの1つでした。

つまり、従来の加速器では、外側、内側にサポート筒が多数存在していたため、小型化や低コスト化の妨げになっていました。

そこで、ソレノイドコイルの外側に鞍型コイルを配置することで、F1、F2を受けるサポート筒を共有化することが可能となりました。これにより、サポート筒の数が減り、全体的に小型化、低コスト化に寄与できる加速器を実現した、ということになります。

回転ガントリにも応用

超電導電磁石は加速器だけでなく、回転ガントリにも応用されています。

出典:東芝エネルギーシステムズ株式会社

 

今回は東芝の加速器の特許に注目してみました。

加速器の原理などについても、今後フォーカスしていきたいと思います。

 

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