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マイクロバブルと超音波を利用した薬物・遺伝子送達

DDS 超音波
 

超音波といえば、健康診断などで行うエコーを思い浮かべる人が多いと思います。

しかし、これまで診断に使われていた超音波を治療にも利用しようという、セラノスティクスが注目されています。セラノスティクスとは、診断(Diagnostics)と治療(Therapeutics)を融合したもの。つまり、診断しながら治療もしてしまおう、という概念です。

私は最近知ったばかりですが、2011年には専門ジャーナルも登場しており、高いインパクトファクターも獲得しているようですね。

先日記事にした「量子メス(次世代重粒子線治療装置)」のセミナーでも、登場したキーワードでした。

そこで、今回はDDSとして期待されている、超音波とマイクロバブルを利用したデリバリーシステムに注目してみたいと思います。

マイクロバブルとは何?

マイクロバブルは直径1~100μmの気泡をいい、造影剤に利用されています。

造影剤とは?

造影剤は、CT検査やMRI検査で使われるので耳にしたことがある方も多いと思います。

造影剤を生体内に投与すると、生体組織と造影剤とでは画像上の写り方が異なるため、このコントラストを利用して本来であれば見えにくかったものが見やすくなります

例えば、X線では写らない血管も造影剤を投与することで画像上に写すことができます。

造影剤には様々な種類がありますが、そのうちの1つが、超音波造影剤なのですね。

超音波の応用分野は広い

超音波の応用分野は、調べれば調べるほど興味深いですよ。

ざっとこんな感じです。

今回ご紹介するのは、赤丸のついた箇所です。

マイクロバブルと超音波を利用したデリバリーシステム

この技術を理解する前に、まず液体中で起こる、キャビテーションという現象について理解する必要があります。

キャビテーションとは?

キャビテーションとは、超音波を利用した洗浄などで使われている現象です。

まず、波には横波縦波があります。縦波のことを粗密波ともいいます。

超音波には横波縦波があります。下の図で、上が縦波、下が横波を表しています。

出典:Britannica kids

超音波の波形を見やすくするために縦波を横波に変換することもあります。

超音波は粗密波なので、密度の高い「」の部分と密度の低い「」の部分が交互にできます。

液体に超音波を照射すると、液中にμmサイズの気泡が生成されます。

なぜ、気泡が生成されるのでしょうか?

気泡発生の仕組みを理解すると、キャビテーションを理解しやすくなりますので、少し補足しておきます。

気泡の発生とヘンリーの法則

身近な例を使って説明すると、コーラなどの炭酸飲料の缶やペットボトルを開けたとき、「プシュッ」と音がしますよね。

この「プシュッ」という音は、

それまで加圧されていた炭酸飲料が、蓋を開けたことで減圧されて、常圧に変化したことで生じたものです。

加圧された状態では、液体中に気泡が十分に溶けていました。

しかし、蓋を開けることで、減圧されたため、ヘンリーの法則に従って、完全に溶けていた気体が溶けきれなくなり、空気中に飛び出してきたのです。

ヘンリーの法則:液体に溶ける気体の量は気体の圧力に比例する。(成立する条件については割愛します)

 

液体に超音波を照射したときに、気泡が生成されるのも同じ仕組みです。

つまり、超音波に液体を照射すると、」の部分で減圧されて気泡が発生します。気泡は、」の部分では圧力が高くなるため圧縮されますが、「」の部分では再び減圧により拡張されます。

このように、液体に超音波を照射すると、液体に正圧、負圧が交互にかかります。

この繰り返しにより、下図のように、空洞は次第に大きく成長していきます。この空洞ができる現象のことをキャビテーションといいます。

最終的に、この気泡は常圧に戻る時に圧壊し、消滅します。この時、非常に強い衝撃波が発生します。

超音波洗浄で利用しているのはこの衝撃波で、強い衝撃力により頑固な汚れも落とすことができます。

以上が、キャビテーションに関する説明でした。

周波数と衝撃力の関係

ちなみに、洗浄力は周波数により変化します。

私も当初混乱した「周波数」の高低について少しふれておきます。

山→山、または、谷→谷の波の流れを1周期といい、この長さを波長といいます。

周波数とは、この周期が1秒間に繰り返された回数のことを指します。つまり、1秒当たりの周期数が周波数です。

下図のように、

波長が長い、つまり1秒間に繰り返される周期数が少ないものを低周波

波長が短い、つまり1秒間に繰り返される周期数が多いものを高周波といいます。

キャビテーションの大きさを決めるのは周波数

低周波ではキャビテーションは大きくなり、衝撃力も強くなります。

一方、高周波では、キャビテーションは小さくなり、衝撃力が小さくなります。

そのため、頑固な油汚れなど強力な洗浄力が必要な場合は、低周波を利用し、ハードディスクなど強すぎる衝撃力によるダメージを避けたい場合は、高周波が利用されています。

このあたり、個人的にとても興味深いものでした。
今回のメインテーマであるソノポレーションにも関係するのですよ。

ソノポレーション

それではここから本題に入ります。

今回の本題は、マイクロバブルと超音波を利用した薬物・遺伝子送達でした。

冒頭で述べたマイクロバブル(超音波造影剤)を体内へ投与し、

所望の位置で治療用超音波(0.5~3Mhz)を照射すると、マイクロバブルの崩壊(キャビテーション)が誘導されます。

このとき生じるジェット流により細胞膜に一過性の小さな孔が生じます

この孔を通じて、細胞外から細胞内へ所望の物質を導入することができるようになります。

この作用によって薬物などをデリバリー(送達)することをソノポレーションといいます。

 

出典:ResearchGate

この技術を利用すると、体外から超音波を照射することで、目的組織のみに低侵襲的な送達が可能となります。

この技術を知ったとき、私が真っ先に思い付いたのが抗がん剤のデリバリーシステムに応用できるのではないか?というでした。

抗がん剤の開発業務で見たもの

フリーランスになる前、抗がん剤の開発に携わっていたことがあります。

業務の一環で、自分が担当する治験実施機関で、治験に参加されている患者さんのカルテを確認し、プロトコール逸脱がないかなど確認するのですが、どの方も抗がん剤による副作用で苦しんでいました。

抗がん剤は正常な細胞もがん細胞も構わず叩いてしまいます。

しかし、ソノポレーションを応用すれば、単独使用では副作用の強い抗がん剤でも、目的組織のみに作用させることで、副作用を軽減することが可能となるはずです

実際、ソノポレーションは新たなドラッグデリバリーシステム(DDS)として期待されていますが、その実現に求められるのは、最適化されたバブル製剤です。

 

長くなってしまいましたので、次回はソノポレーションに関する特許をご紹介したいと思います。

参考:

http://www.kansaicenter.imr.tohoku.ac.jp/_userdata/sono34_2.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/43/2/43_2_211/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/73/7/73_432/_pdf
https://www.dakotajapan.com/mpseries/point/aboutUltrasonic.html

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