「動く遺伝子」トランスポゾンに迫る!

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アサガオの花には、さまざまな色、形、模様がありますよね。

アサガオの多種多様なありさまは突然変異によるもので、それは動く遺伝子「トランスポゾン」によってもたらされていることがわかっています。

今回はトランスポゾンがどんなものか、分類、トランスポゾンを応用した研究事例の一部をご紹介します。

トランスポゾンとは?

ゲノムの中を動くことのできる遺伝子のことをトランスポゾンといいます。

トランスポゾンが動くことを転移といいます。

トランスポゾンが動いてゲノムの他の場所に入り込むと、トランスポゾンが入り込んだ部分の遺伝子は破壊されてしまいます。

そのため、トランスポゾンが活性化すると、血友病や筋ジストロフィーなど疾患をもたらすことがあります。このあたりは後述するとして、まずはトランスポゾンにはどんなタイプがあるか見てみましょう。

トランスポゾンの種類

トランスポゾンはその動き方によって、
DNA型トランスポゾンレトロトランスポゾン(RNA型トランスポゾン)に分けられます。

DNA型とRNA型の違いは、転移するときのコピーの仕方と、転移の前後でコピーが増えるかどうかです。

レトロトランスポゾン

レトロトランスポゾンには2つの特徴があります。

レトロトランスポゾンの特徴

・コピー&ペーストで増える

・RNAを中間体として増える

・転移後にコピー数が増える

 

まず供与DNAが転写されてRNA(一次コピー)となり、RNAがさらにコピーされ、DNAが合成されます(二次コピー)。

コピーされたDNAが挿入されますので、レトロトランスポゾンはコピー&ペーストであるのが特徴です。供与DNAにあったレトロトランスポゾンは動かず、元の場所にありますね。

①転写されてRNAとなる(一次コピー)

②RNAからDNAを合成(二次コピー)

③複製

④挿入(ペースト)

 

レトロトランスポゾンは真核細胞だけにありますが、次にお話しするDNA型トランスポゾンは細菌にも存在します。

DNA型トランスポゾン

レトロトランスポゾンがいったんRNAとなって移動するのに対し、DNAのまま動けるのがDNA型トランスポゾンです。

コピー&ペーストであるレトロトランスポゾンに対し、DNA型トランスポゾンは、カット&ペーストなのが特徴です。

DNA型トランスポゾンの特徴 

・カット&ペースト

・DNAのまま動く

 

こんな流れをたどります。

①DNAを切り取る(カット)

②複製

③挿入(ペースト)

 

DNA型トランスポゾンはカットはカットですが、ご存知の通りDNAは2本鎖ですよね。DNAを2本ともカットする場合と、1本だけカットする場合があります。

この切り取り方の違いによって、実はDNA型にもコピー数が増えるタイプと増えないタイプがあるのです。

DNA型トランスポゾンには、コピーが増えるタイプとコピーが増えないタイプの2つがある!

 

【コピー数が増えないタイプ】DNA型トランスポゾン

これは2本ともカットするタイプです。

2本とも切り取られたDNAが、標的DNAに挿入されます。元のDNAから切り取られた部分は修復され、標的DNAにトランスポゾンが2本まるごと移動しています。転移の前後でコピー数は増えていませんよね。

 

【コピー数が増えるタイプ】DNA型トランスポゾン

これは1本だけ切り取るタイプです。

2本鎖DNAから1本だけ切り取り、これを複製し標的DNAに挿入します。供与DNAに残った1本鎖からDNAを複製するので、全体を通じてコピー数が増えていますね。

供与DNAは転移の前後で一見すると変化のないように見えますが、カット&ペーストで元通りになっています。

ここでは、供与DNAと標的DNAが別の分子にある様子を図解していますが、両者が同じ分子にあっても、転移の仕組みは同じです。

 

短所を長所に変えるトランスポゾンタギング

このようにゲノムを動くトランスポゾンは、遺伝子破壊を招くことから、「利己的な因子」と称されることもあります。

まるで完全に悪者ののような言われ方ですが、遺伝子破壊を逆に利用して、有用遺伝子を効率的に見つける手法にも応用されています。

それが、トランスポゾンタギングです。

トランスポゾンを挿入し、それぞれの遺伝子を破壊して、植物の生長に各遺伝子がどのように関わっているかを調べることができるのです。

例えば下のイメージ例では、トランスポゾンを挿入して遺伝子Aを破壊すると、植物は小さくなっていることから、遺伝子Aは生長促進に関係することがわかります。また、遺伝子Cを破壊すると色が褪せていることから、遺伝子Cは色に関わっていることがわかります。

ここではイメージ例を示しましたが、トランスポゾンタギングは、イネ、トウモロコシ、アサガオなどの植物で活用されています。面白いですよね。

トランスポゾン移動抑制剤の開発(メナード化粧品)

前述の通り、トランスポゾンタギングとは反対に、トランスポゾンには身体に望ましくない変化を引き起こす一面もあります。

トランスポゾンが移動することで、筋ジストロフィー、血友病、アルツハイマー病、悪性腫瘍などが引き起こされるとされています。

これはトランスポゾンの移動によって遺伝子が破壊されてしまうからですよね。ということは、トランスポゾンの移動を防げば、疾患の発現を予防できることになりますよね。

トランスポゾンの移動を抑制する(つまりトランスポゾンを不活性化する)場合、DNAメチル化などのエピジェネティックな制御機構が使われます。DNAメチル化は遺伝子の発現を抑制するので、メチル化すればトランスポゾンの移動を抑制できるというわけです。

メナード化粧品は、マンネンタケの中にDNA配列のCpGアイランド(CGの配列が集中する領域)のシトシンにメチル基を付加する酵素が含まれることに着目。マンネンタケ抽出物を使ってトランスポゾンの移動を抑制できる特許を公開しています。

出典:http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/science/201801.html

上図のように、DNAがメチル化されると、それ以降は転写できなくなり、遺伝子を使えなくなってしまいます。マンネンタケ抽出物がDNAメチル化酵素の産生を促進することを見出したメナード化粧品の発明は、医薬品のほか、化粧品にも応用できるとされています。

化粧品といえば、アンチエイジングを連想しますね。

2019年2月に発表されたネイチャーの論文によると、レトロトランスポゾンの活性化は老化に関係しており、レトロトランスポゾンの1つであるLINE1の逆転写酵素が老化関連疾患を治療するうえでターゲットになるとされています。

 

今回はトランスポゾンの分類、転移のメカニズムから、トランスポゾンを利用した研究をご紹介しました。

苦手意識の強かった遺伝子分野に少しずつ入り込めてきました!この調子で理解を深めていきます。

 

【参考】

特開2015-110546【トランスポゾン移動抑制剤】(日本メナード化粧品)

L1 drives IFN in senescent cells and promotes age-associated inflammation

ミヤコグサのトランスポゾンタギング

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