恐竜化石の研究・教育に活用されるCTスキャン・3Dプリンタ+【小さな思いつき】
こんにちは、あゆみです。4台の3Dプリンタに囲まれて生活しています。
恐竜といえば、小さな子供たちに根強い人気のあるキャラクターですよね。
わが家の子どもも恐竜が大好き。毎日図鑑を開いては、まだ知らない恐竜を知ろうとがんばっています。
気づいたことが1つ。
大人のちょっとした工夫で、子供の可能性はいくらでも伸ばしてあげられると思いました。
今回ご紹介するのは、恐竜の化石研究から、教育に活用されるデジタル機器(CTスキャン・3Dプリンタ)。
恐竜学の研究に使われるだけでなく、本来であれば「さわってはいけないもの」に思う存分「さわる」を可能にするのも3Dプリンタです。
3Dプリンタは、空想を形にするだけではないのですね。「触れられないものに、触れられる」――ここにも教育的価値があることが、各事例からわかりました。
この記事を書きながら、集客に困る博物館向けに小さなアイディアも思いつきました。3分かからずに読めますので、ご興味のある方は最後までお読みください。
目次
恐竜の化石研究におけるCTスキャンの応用
脳の研究
CTスキャンというと、病院で受ける検査でおなじみのものですよね。X線を照射して、骨や臓器の吸収度の違いを利用して、体の中の構造をデジタルデータにするものです。
恐竜化石の場合、人間と違って、X線による悪影響は考えなくてすみますので、ヒトに使うものよりも強いX線を使います。
このCTスキャンを恐竜化石に応用するアプローチは1980年代より行われていて、その一人がオハイオ大学のローレンス・ウィットマー教授です。
たとえばこれは、CT画像を複合して再現したティラノサウルスの頭骨のイメージです。
恐竜の脳を研究するためには、脳エンドキャストという「型」をつくらねばなりません。
脳エンドキャストとは、頭骨の中にプラスチックなどを満たして作った型のことです。しかし、多くの場合、恐竜の頭骨の中には石がつまっているため、脳エンドキャストを簡単には作れません。
そこで活用されたのがCTスキャンです。
CTスキャンで得られた頭骨の断層画像をコンピュータで組み合わせることで、立体的な脳エンドキャストを作れるようになりました。
脳の形がわかると、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚や脳の発達具合がわかるようです。
ローレンス・ウィットマー教授は、CTスキャンを利用した研究で、鳴き声に個体差があることも見出しています。
さらに、CTスキャンは性別の特定にも使われています。
性別の鑑別に使われるCTスキャン
CTスキャンで得られたティラノサウルスの画像に、骨髄骨のような部分が確認されました(写真のMB)。
骨髄骨とは、メスの鳥類にみられるものです。写真のティラノサウルスを詳しく調べたところ、鳥類の骨髄骨と同じ物質が含まれていたことから、メスであることがわかりました。
骨の中を調べられるCTスキャンは性別の確認にも活用されているのですね。
これらは数年前の資料による知識ですので、現在はさらに研究が進んでいると思います。
恐竜化石の教育に活用される3Dプリンタ
前述の、CTスキャンを利用した脳エンドキャストの研究は近年、盛んに行われているようです。
たとえば、博物館にある復元化石の多くは、有色で、中の構造がどのようになっているかはわかりませんよね。
教育効果を高めるために、透明の頭骨模型の作成に、CTスキャンや3Dプリンタが活用されています。
これはティラノサウルスの頭骨模型です。3Dプリンタで型を作製して作ったものです。
この狙いは、
①脳が頭骨の中のどこに位置し、
②脳がどれくらいの大きさなのか、
直感的に理解してもらうため。
確かに、博物館で透明の頭骨模型はこれまで見たことがありません。
模型に触れることができれば、子供の教育にもとても役立ちそうですよね。
神奈川県にある地球博物館も過去に、おもしろい取り組みをしています。
博物館で注目度の低い展示に関心を持ってもらうために、3Dプリンタで「足跡」をプリントし、教材として活用しました。
実物の恐竜化石なのに、入館者の多くが立ち止まらず、通り過ぎて行ってしまうことを残念に感じたことがきっかけでした。
恐竜の足跡を、3Dプリンタで縮小プリントした恐竜の立体足跡を学会で発表したところ、高校の授業で教材として使いたいという問い合わせがあったようです。
このような事例を知ると、3Dプリンタは教育だけでなく、博物館のPRにも使えますね。
恐竜博物館に恐竜の足跡スタンプラリーなんて設置したら、来館した子どもが喜ぶこと間違いなしです(後述)。
【自宅編】恐竜教育への3Dプリンタの活用
わが家では、3Dプリンタを利用していろいろな恐竜おもちゃを作っています。
👇このような市販されているおもちゃでも代用できますが、データが形になるのを目にしてほしくて、日々いろいろプリントしています。
これは自宅でつくった恐竜の骨格模型です。
もともとはこのような状態でプリントされます。
私が3Dプリンタを稼働させていると、「何作ってるの?」と子供が聞いてくるのが我が家の日常です。
先日恐竜博2019に行ってきました。
展示されていたむかわ竜について理解を深めるために、この漫画を読みました。
すばらしい漫画で、感想はあらためて書く予定です。
この本の中で、見つかった化石が、恐竜の化石かどうかを鑑別するシーンがあります。
たとえばこの2つを3Dプリンタで復元して、博物館に展示して子供に手に取らせてあげれば、おもちゃへの興味を超えて、恐竜学への興味にもつながるはずです。
私がよく行くのは上野の科学博物館ですが、恐竜について言うと、「子供が手に取って楽しめる展示」は現在ありません。
恐竜博2019にもなかったと思います。地方で集客に困っている博物館であれば、こういった工夫を取り入れることで、来館数増加につながるのかなと思います。
👇たとえば、今思いつきのアイディアですが、
いろいろな恐竜スタンプを作って、館内でスタンプラリーを企画する。
売店でスタンプラリーで登場した恐竜スタンプ各種を販売する、または、スタンプラリーに参加した子に小さな3Dプリンタ製恐竜フィギュアをプレゼントする。
夏休みには、博物館主催の「3Dプリンタでつくる恐竜スタンプ」「3Dプリンタでつくる恐竜骨格模型」などのイベントを企画し、来館数アップを狙う。
恐竜の3Dプリンタ模型をつくって、子供が自由に触れるように展示する。(例)口をおおきく開けたティラノサウルス/頭骨の透明模型など
予算を無視した非現実的なアイディアかもしれませんが、子供にとってはうれしい取り組みだと思います。恐竜学への興味をひくと同時に、集客効果のある企画はいくらでも考えられそうです。
(地方へは足を運んでいないため、憶測によるコメントです。すでに実施済みでしたらごめんなさい)。
教員のための博物館の日2019で、授業に3Dプリンタ・3Dモデルをどのように活用するかのプログラムが予定されていますね。
私は教員ではありませんが、ダメ元で申し込む予定です。申し込みが認められたら取材してきます!
【参考】
出張講義で常設展「恐竜足跡の壁」を活用し出張恐竜展示を組み合わせる試み
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