趣味を超えて教育に広がる「3Dプリンタ」 授業にどう役立てる?【国立科学博物館の教育プログラム取材レポ】

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国立科学博物館で開催された「教員のための博物館の日2019」で、授業での3Dプリンタの活用方法を紹介するプログラムがありましたので、見学させていただきました。

参加者は教員の方やこれから教員になる方。30人以上が集まり、立ち見の人もいたほどの盛況でした。

講師は国立科学博物館の森健人先生。

路上で博物館の面白さを体験してもらう路上博物館や、出前授業などの活動を積極的に行われています。

3Dプリンタの基本原理から、方式の違い、データの入手方法、データの作り方まで、基本的なことの解説の後、実際にプリントした造形物を使ったワークショップが行われました。

 

参加者のほとんどは、3Dプリンタを見るのも触れるのも初めて。

実物大にプリントしたジャイアントパンダの牙が配られ、参加者はサポート材をとる体験をしました。

 

3Dプリントされた動物骨格

 

化石骨格の復元に3Dプリンタが活用されていることは過去記事でもご紹介しました。

 

化石発掘のために3Dプリンタを利用する場合、CTスキャンで得られた3Dデータを使います。

森先生が主に活用されているのは、フォトグラメトリーという技術。

スキャンで3Dデータを取得する方法と違い、写真撮影するだけで3Dデータが得られます。

 

フォトグラメトリーの利点は次の4点。

・大きさの制限がない(写真撮影できればOK)

・スマートフォンでも可能(高性能カメラだとより良い)ソフトウェアがあれば

・自宅でできる

・CTやスキャナに比べて安価

 

一眼レフカメラなど高性能カメラがあれば精度がさらに良くなりますが、スマホと無料ソフトを使えば、だれでも3Dデータをつくることができます。

3Dプリンタを使うことで、ゾウなど大きな動物でも縮小してプリントできます。

 

大きな標本だと子どもが持つことができませんよね。3Dプリンタであれば手に持つことができます。

さらに、頭骨と下顎骨の組み合わせをそれぞれプリントすれば、噛み合わせたり、構造がどうなっているか調べたり、手に触れて体験することができます。

 

従来の博物館では、手に触れられる展示はほとんどありません。

森先生が目指すのは、誰もが標本に触れられる世界。

実物標本では大きすぎて持ち上げられないものも、3Dを使えば小さくプリントして、手に取れる標本をつくることができます。

3Dプリンタを使うことで次の3点が可能になるわけですね。

・大きいものを縮小してプリントできる(小さいものも拡大できる)

・手に触れられる

・実物の骨に対する心理的ハードルを除去できる(汚い、怖いなど)

 

今回のプログラムには、会場に3Dプリンタが1台展示され、稼働している様子を見ることができました。

わが家にもあるAdventurer3

 

ほかの授業への3Dプリンタの活用事例

化石の復元模型のほかにも、下記のように、3Dプリンタを教育に活用する事例はいろいろあります。

地理への応用

・立体地図

・火山モデル

医療への応用

・心臓モデル

 

立体地図をつくる

3Dプリンタで立体地図をつくるのは思いつきますが、どのように使うかイメージがわきますか?

※地形の3Dデータは国土地理院からダウンロードできます。

 

学校の周りの地図をプリントして、水がどのように流れるかなど確認するために使います。

海岸近くにある学校などで、地震発生時に逃げるルートを決めたり、事前にできる予防策を考えたり、生徒が考える課題として授業に取り入れることができますね。

 

火山モデルをつくる

出典:溶岩流の形態を支配する要因に対する探究学習(日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 31 No. 8(2017))

もう一つの活用方法として紹介されたのが火山モデル。

調べてみると、火山の形と溶岩の粘り気を調べる実験で、3Dプリンタが活用されています。

溶岩が流れるとき、火山の形や斜面の傾斜が関係します。3Dプリンタを活用すれば、形や傾斜を変えたモデルを複数つくることが可能。利用価値は大いにありですね。

 

心臓モデルをつくる

医療モデルといっても、臓器にそっくりな形状に3Dプリントするだけではありません。

世田谷区立桜丘中学校では、生徒が両生類の進化のプロセスを考える材料として、3Dプリンタを授業に取り入れています。

出典:【STEM教育】3Dプリンタを使った理科の授業_世田谷区立桜丘中学校(https://youtu.be/ZmqeTIXFRKg)

 

心房、心室の形状を3Dソフトで変えながら、両生類からどのように進化すれば哺乳類のような心臓になるのか、生徒自身でモデリングしながら考える取り組みです。

 

 

実物より小さいレプリカをつくって、本来であれば触れないものを体験するツール、火山や地図のように小さくプリントして検証するツール思考を広げるツールなど、3Dプリンタの活用方法はこれ以外にもまだたくさんありそうですね。

 

当日参加されていた方に話をうかがってみると、小学校高学年~中学校の理科の先生でした。

小中高のどの教科を担当している先生方が参加されているのか、詳しく知りたかったのですが、全員に話をうかがうことはできませんでした。

今回30人以上と、会場の席を上回る参加者がいたことは意外でした。教員関係者の中にも、3Dプリンタに関心のある方が増えているようですね。

STEAM教育の影響もあり、日本でも3Dプリンタを趣味だけでなく、教育に活用する動きは今後さらに加速していくでしょうね。今後も教育への3Dプリンタの活用方法について、情報をシェアしていきたいと思います。

 

※本記事は、国立科学博物館に許可をいただき掲載しております。取材にご協力いただき、ありがとうございました。

 

【参考】

「教員のための博物館の日2019」授業に役立つプログラム(授業に役立つ3Dモデル・3Dプリンター活用法 入門講座)当日の講義内容(森健人先生)

溶岩流の形態を支配する要因に対する探究学習(日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 31 No. 8(2017))

 

 

 

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