3Dプリンタのラフトはなぜ必要?凹凸面の謎に迫る
3Dプリンタで印刷するときに、ラフトの設定を忘れ、造形に失敗したことはありませんか?
私も、うっかりラフトの設定を忘れ、気づくと造形物がプラットフォームから剥がれてしまったことがあります。
今回はラフトが必要な理由と、なぜラフトは凹凸構造になっているかについて考えてみました。
目次
ラフトが必要な理由
ラフトは、3Dプリントするときに、造形物の土台となる部分です。造形物の底面積よりも、大きい面積で印刷されるうすい層です。
ラフトの目的は、プラットフォームとの接触面積を大きくし、造形中に造形物がプラットフォームからはがれないように安定させることです。
すると、底面の面積が十分に大きいオブジェクトであれば、ラフトを設定しなくてもいいように思えますよね。私はそう思いました。
たとえば、このような細胞構造の場合。
底面積が大きいので、ラフトの設定は不要だと思い、ラフトなしで印刷しました。すると、
気づいたら、造形物がプラットフォームから剥がれ、ノズル部分にくっつき、こんな状態になってしまいました。このまま気づかなければ、ノズルが詰まってしまったでしょう。
よく観察すると(現在、FlashforgeのAdventure3を使っています)、ラフトは線を並べた凹凸面(でこぼこ)になっています。これはなぜだろう?と不思議になりました。
プラットフォームに接するのが、この凹凸面です。
裏面は滑らかな面で、ここに造形物が造形されます。
造形開始時、ラフトのプリントは特にゆっくりです。ラフトのプリントが終わると、スピードアップします。
一般にいわれる、接触面積を大きくするためにラフトを設定する、というのは、造形物自体のプラットフォームとの接触面積が小さい場合の話です。しかし、上記の通り、細胞構造モデルのように底面積が十分大きいものであっても、ラフトなしではうまく造形できませんでした。
どうやら、この凹凸面に何かヒントがありそうです。
ラフトが凹凸面の理由
最初は凹凸面にすることで、接触面積が増えるためだと思いました。しかしこれは、一方が液体で、一方が固体の場合や、異種材料を接合させる場合などにはあてはまりますが、今回のケースにはあてはまらないと考えました。
異種材料の接合とは、こんなイメージ。
次に、「動きにくくなる」→「摩擦力が増すため」ではないかと思い、摩擦力との関係を考えました。
こちらの写真をご覧ください。
左側と右側、どちらが滑りやすいでしょうか?左側なのは一目瞭然ですよね。
左側は滑らかな面、右側は凸凹のある面です。
一般化したイラストがこちら。
摩擦力とは、平面にある物体を動かそうとしたときに、動かないよう邪魔する力のことです。ということは、ラフトにかかる摩擦力が大きくなるように印刷すれば、造形物が動きにくくなります。
摩擦力は、表面の滑らかさに影響されます。
比較的滑らかな面では摩擦力が小さくなり、物体は動きやすくなります。
凸凹面では摩擦力が大きくなり、物体は動きにくくなります。
ラフトのプラットフォームに接する側が、凹凸面になっているのは、摩擦力を大きくし、動きにくくするためなのですね。
考えてみれば当たり前のことなのに、すぐに摩擦力との関係に気付かず、恥ずかしいです。。。
動画(24秒)をご覧になるとイメージしやすいと思います。
ちなみに、摩擦力と接着力との関係を調べているなかで、真実接触点という概念が興味深かったです。
どんなに滑らかに見える表面も細かくみると凹凸がありますよね。そのような二つの面を接触させたとき、「本当にくっついている」部分を真実接触点といいます。真実接触点では原子間力や分子間力による凝着が起きており、面を動かすためには、真実接触点での凝集を断ち切る必要があります。ものがくっつく仕組みも深掘りすると興味深いですね。
まとめ
今回はラフトのプラットフォームに接する面が凹凸面である理由を考えました。
結論は、摩擦力を大きくし、動きにくいようにするためでした。
ここまで考えたので、今後はラフトの設定を忘れることはないでしょう!