TCT2020 3Dプリンタ展に行ってきました
3Dプリンタ専門展、TCT 2020に行ってきました。展示の規模は2019年とあまり変わらない印象でした。
印象的だったのが、製造元を聞くと、ほとんどが中国や台湾であること。特に、個人をターゲットにした商品のほとんどが中国発でした。
今回の記事では、私が気になったものを中心にご紹介します。
目次
ニコンの金属3Dプリンタ
ニコンが金属3Dプリンタを開発したニュースを覚えている方もおられるのではないでしょうか?
ニコンの狙いは、エレベーターに入るサイズに仕上げること。エレベーターに入れば、学校や施設などに導入可能になります。
担当者によると、冷蔵庫サイズのこの金属3Dプリンタは高等専門学校に導入されています。
高校生がFDMに加えて金属造形もできるようになったのはおどろきですね。
渋谷のTechshopにも導入されており、会員になれば個人が金属3Dプリンタを使用できるといいます。
必要な箇所に必要な分だけ粉末を局所的に供給して、レーザーを照射するレーザーデポジッション方式。
粉末を敷き詰めてレーザーを照射するパウダーベッド方式に比べて、デポジションは精度が劣ると言われますが、ニコンの金属3Dプリンタは高精度も実現しているのだそう。
価格は3000万円と、個人の手が届く価格ではありませんが、今回のTCTでは、個人でも手の届く金属3Dプリンタが登場しました。
Flashforgeの新型3Dプリンタ「Adventurer3X」です。
Flashforgeの革新的・金属3Dプリンタ
常識をくつがえす金属3Dプリンタが登場しました。
FlashforgeのFDMタイプAdventurer3を使っている人であれば、色違いの機種が出たと思ってしまうところですが、これは金属3Dプリンタです。
ノズルは0.3mm/0.4mmの二種類。ステンレス製フィラメントで積層した造形物を、脱脂、焼結することで、金属製品が出来上がります。
現存のAdventurer3と同様に、キャリブレーションは不要、プリントヘッドもワンタッチで交換可能です。
プラットフォームを変えることで、PLA、ABS、ステンレスフィラメントと異なる材料の3Dプリントが可能になります。
金額は89,000円(税別)と破格の安さです。
金属3Dプリンタで造形した後、脱脂、焼結にかかる費用は一般に高額です。Adventurer3Xについては、数千円で焼結する代行サービスを予定しているとのこと。
詳細や注文は公式サイトをご覧ください。
3Dプリンタの真の量産を実現するNature ArchitectsのDFM技術
個人的に一番気になっていたのがNature ArchitectsのDFM技術。
最終製品は部位によってあるところは曲がり、あるところは弾力が必要など、異なる物性・機能が求められますよね。
部位ごとに求められる異なる物性・機能を、設計の段階で物性ごとにわけて、適切な構造を割り当てて、一括で3DプリントするのがDFMという技術です。
これまでであれば機能に応じたパーツを用意して組み立てていたのに対し、DFMを使うことで組み立てなしで可動部を持つ人工物を一体成型できます。
ぱっと見同じ構造でも、弾性のある構造、軽量なのに高剛性な構造をプリントできます。
開発したのは東大発のベンチャー・Nature Architects。
代表の大嶋氏は、3Dプリンティングの本質的な課題として「ハードウェアの進化に対して、ソフトウェアの進化が遅れている」ことだと指摘します。
ユーザーが欲しい機能(弾性や変形や可動性など)に基づいて、3Dモデルを物性ごとに区分けし、Nature Architects独自の構造ライブラリから必要な構造をそれぞれの箇所に割り当てます。
DFM技術で設計そのものを変えることで、コスト効率が良くなり、3Dプリンティングによる真の量産につながりそうですね。
Nature Architectsは、複雑な加工組立を必要とする業界をターゲットにしています。
教育に活用できるSnapmakerの1人3役3Dプリンタ
一見すると、よくある3Dプリンタに見えますが、3Dプリンタ、レーザー彫刻、CNC彫刻の3機能を有している、3-in-1な3Dプリンタです。
スマホで撮った写真を装置に送って、レーザー彫刻することも可能。
担当者によると、1装置で3機能を有することから、欧米では教育に活用するところが多いとのこと。
日本Amazonではまだ小型タイプのみですが、今後、最新機種も導入されるようです。
触れる文化財を提供したい -トリアド工房-
展示会の奥、目立たない一角に面白い展示を見つけました。
文化財の保存、修復、復元を行うトリアド工房です。文化財のレプリカ製作のサービスを3Dデータ化するところから提供しています。
面白いと思ったのが「触れる文化財を提供したい」とのことから、子供がパズル遊びできる文化財レプリカを作っていること。
こちらは十二神将立像パズル。製作過程がわかるように、色分けしてあります。
三次元計測データから光造形で正確に立体を再現。その後、磁石を埋め込んだり、塗装したりして、子供が触れるパズルに仕上げています。
造形物はForm2で3Dプリントしています。
上野の科学博物館にも、パズル遊びができるハニワを提供しています。
Form3登場!
Form3も展示されていました。さすがFormlab。目の前でじっくり見たかったですが、人だかりで横からなんとか撮影。
いろいろなレジンで造形した出力品も。
Form2との違いとして、レジンタンクから造形物が出されるときに造形物が受ける負荷が軽減されているとのこと。
だから、このような微細な構造も3Dプリント可能ということですね。この出力品、Form2では難しいだろうとのことでした。
多種多様なフィラメントを提供するPolymaker
Polymakerのブースで、光沢あるフィラメントのサンプルをいただきました。
汎用フィラメントを使えるFDMタイプであれば、このような光沢ある仕上がりを実現できます。
といっても、造形直後にこの状態にはなりません。
3Dプリント完了後に、アルコールに20分ほどつけたり、専用装置でアルコールを噴射して、表面が光沢ある状態に仕上がります。
洗い流せるサポート用フィラメントも展示されていました。
すべてのブースは回れませんでしたが、個人的な目玉は、Flashforgeの金属3Dプリンタと、Nature ArchitectsのDFM技術でした。
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