【イスラエル・Collplant社】患者の細胞を使用した3Dプリンタ製ブレスト・インプラントを開発【安全な乳房再建へ】

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イスラエルのCollPlant社は、3Dプリンタで、乳房再建のためのインプラントを開発していることを発表しました。

使っているのは、同社が独自開発したrhコラーゲン。同社がブレスト・インプラントの開発を公表したのは今回は初めてのことです。

CollPlantのインプラントはまだ試作品の製造に成功した段階。実用化されれば、副作用のない乳房再建法として、注目されるでしょう。

今回はこのニュースに注目します。



患者の細胞を使用した3Dプリンタ製ブレスト・インプラント

再生医療で大きなパラダイムシフトとなりうるこの技術。

ポイントは次の3つです。

・移植後にコラーゲンは分解し、患者由来の脂肪組織によって再建される

・5個のヒト遺伝子を導入した独自コラーゲンを使っている

・タバコを利用している

 

現在の乳房再建をおさらい

まず、現在の乳房再建をざっくりみておきます。

現在、乳房再建の手法は次の2つ。

①人工乳房を使う

②自分の組織を移植する

 

①は、人工乳房(シリコン・インプラント)を使う方法です。

出典:がん研有明病院

人工乳房は、患者さんの身体の他の部分を傷つけないのがメリットですが、トラブルも起きています。

最近のニュースでは、人工乳房を使った患者さんにリンパ腫が発生し、製造元のアラガン社が販売停止を発表したように、患者さんにとって異物であるインプラントを使う場合、合併症の問題があります。

乳がん治療後の乳房再建や豊胸手術のため、人工乳房(インプラント)を使った女性の一部に特殊なリンパ腫が発生している問題で、米食品医薬品局(FDA)は24日、関連があるとみられる死者が世界で33人に上ると発表した。大半を製造するアラガン(本社・アイルランド)に対象製品の自主回収を要請。同社はこれに応じ、販売を停止すると同日、表明した。(朝日新聞2019年7月25日19時32分より引用)

 

②の自分の組織を移植する場合は、シリコン・インプラントに伴う問題は起きませんが、自分の身体を傷つける必要があります。

下記のように、腹部の組織を移植することが多いです。

出典:がん研有明病院

 

今回CollPlant社が発表したのは、患者由来の脂肪細胞を使うブレスト・インプラントです。

つまり、

・外来物質を使用しない(=人工乳房ではできなかったこと)

・患者の身体を傷つけない(=自己組織の移植ではできなかったこと)

 

の2点を実現しました。

このブレスト・インプラントは、同社が独自開発した組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)をバイオインクとして使っています。

 

CollPlant社は数年前よりrhコラーゲンの開発に取り組んでおり、特許も取得しています。

出典:CollPlant

興味深いことが、タバコの葉から作っていることです。

タバコを利用して作った組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)は、ヒトや動物の組織由来のコラーゲンと比べて、機能面で優れているようです。

ゲル、ペースト、シート、膜、ファイバーなど様々な形状について、in vitroとin vivo(動物モデル)での試験で、ヒト・動物組織由来のコラーゲンよりrhコラーゲンが優れていることが証明されているとのこと(CollPlant社HPの記載より)。

では次に、rhコラーゲンの作り方をざっくりみていきます。

rhコラーゲンができるまで

①5個のヒト遺伝子をタバコに導入する

(遺伝子組み換えタバコ)

出典:CollPlant

 

②遺伝子組み換えタバコを8週間栽培

出典:CollPlant

 

③葉から組換えヒトコラーゲンを抽出、精製する

出典:CollPlant

 

④3Dバイオプリンティングに活用

 

こんな流れです。動画もどうぞ。

 

ここでポイントは、

タバコを使用していること。

タバコを使うことには次のメリットがあります。

・育てやすい

・気候・土壌をあまり問わない

・丈夫な植物である

・育てる期間が短い(約8週間)

 

CollPlant社は、上記プロセスでできたrhコラーゲンをバイオプリンティングでのスキャフォールド(足場)として使い、ブレスト・インプラントの試作品の製造に成功しました。

では、rhコラーゲンを使ったインプラントが、なぜ安全と期待されるのか?
について、次に解説します。

 

rhコラーゲン製インプラントの安全性が高い理由

CollPlant社は、ブレスト・インプラントに患者由来の脂肪細胞を使用しています。

すごくざっくりですが、イメージ図を作りました。

ざっくりしたイメージ図

脂肪組織を包んだインプラントを移植すると、脂肪細胞は成長を続け、脂肪細胞を包み込むスキャフォールド(rhコラーゲン)は徐々に分解してなくなります。

rhコラーゲンは分解されていくと同時に、脂肪細胞の成長を助ける働きをもっています。

つまり、最終的に残るのは、患者自身の細胞でできたブレスト・インプラントだけ。そのため、拒絶反応や副作用の発生を抑えられるわけですね。

これは、乳がん患者にとって嬉しいニュースですよね。同時に、タバコ業界にとっても良い話でないでしょうか。

 

CollPlant社の歴史を簡単に

CollPlant社がrhコラーゲンバイオインクの開発部門を設けたのは2017年。

2016年には、イスラエル経済省から140万ドルの研究助成金を獲得しています。

2017年には、米国のベンチャー・キャピタルAlpha Capitalから500万ドルの投資をうけ、rhコラーゲンの開発を進めてきました。

2018年に、United Therapeutics社とライセンス、開発、実用化で契約を締結。United Therapeutics社は、現在、3Dプリントした肺をヒトに移植するために、rhコラーゲンを使った開発を進めています。

 

今回はホームぺージ、報道ニュースをもとに記事にしました。詳しい内容は論文や特許を読まないとですね。

興味深いニュースでした。CollPlant社の動向は今後も要チェックです。

 

【参考】

CollPlant reveals it is developing bioprinted breast implants

CollPlant and United Therapeutics Announce Global Licensing and Commercialization Agreement for 3D Bioprinting of Solid-Organ Scaffolds for Human Transplants

CollPlant develops first prototypes for regenerative 3D bioprinted breast implants

がん研有明病院 Chapter.3: 乳房再建の方法

 

 

 

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