ユビキチン・プロテアソーム経路とリソソーム経路の違いって何?【タンパク質分解】

こんにちは、あゆみです。

タンパク質分解を行う経路に、ユビキチン・プロテアソーム経路とリソソーム経路があるけど、違いがわからない。

 

今回はこの質問に答えます。

一言で回答すると、

リソソーム経路=リサイクル工場

ユビキチン・プロテアソーム経路=ゴミ処理場

 

もう少し詳しく回答すると次のとおり。

【リソソーム経路】

非選択的にタンパク質を分解する。

摂取したタンパク質を分解して一旦アミノ酸にし、再合成したり、エネルギーに使うため、すべてのタンパク質を分解する

➡生体維持のために、アミノ酸にして、役立てる

【ユビキチン・プロテアソーム経路】

選択的にタンパク質を分解する。

異常なタンパク質・損傷を受けたタンパク質など不要なタンパク質を分解する

➡生体維持のために、危険なものを取り除く

 

まだ理解できなくて問題ありません。以下、詳しくみていきます。

※下記の内容は、2分で読めますので、さらっと理解しておきましょう!



リソソーム経路

リソソーム経路についてみていく前に、リソソームについて簡単におさらいしておきます。

リソソームとは、細胞内消化を行う細胞小器官です。

自宅で3Dプリンタでつくった動物細胞モデル

袋の中に40種類のタンパク質分解酵素を含んでおり、タンパク質や核酸、脂質などをアミノ酸に分解しています。

分解されれできたアミノ酸を再利用して新しいタンパク質を合成したり、いらない分子を分解して細胞外に排出したりしています。

つまり、リソソーム経路は生体内のリサイクル工場といえます。

 

その特徴は、非選択的であること。

後述するユビキチン・プロテアソーム経路との大きな違いです。

摂取したタンパク質を分解して一旦アミノ酸にし、再合成したり、エネルギーに使うため、非選択的にすべてのタンパク質を分解します。

 

ポイント

リソソーム経路は、栄養分を生体活動に不可欠なアミノ酸に分解し、必要なものに変えるリサイクル工場

 

リソソーム経路は主に3つに分類されますが、ここでは下記の2つを取り上げます。

エンドサイトーシス経路

オートファジー経路

 

1つ目のエンドサイトーシス経路では、細胞外の物質を細胞内に取り込みます。

細胞膜のへこんだところに物質を集めて、細胞内に取り込みます。

出典:A Definition and Explanation of the Steps in Endocytosis

 

2つ目は、オートファジーという経路です。

数年前にニュースで取り上げられたので聞いたことある人も多いはず。

オートファジーは自食作用ともいい、細胞が自分を食べることを意味します。

出典:京都大学大学院医学研究科 微生物感染症学分野

隔離膜という膜が物質を取り囲み、オートファゴソームというものを形成します(覚えなくてOK)。オートファゴソームがリソソームと融合して、物質が分解されます。

 

エンドサイトーシスとオートファジーの関係を比較したのがこちら。

出典:The interplay between exosomes and autophagy – partners in crimeを改変

 

以上がリソソーム経路です。

上記の通り、リソソーム経路の特徴は、非選択的であることです。

つまり、取り込まれたものをすべて分解します。

しかし、体内のタンパク質すべてを無差別に分解してしまっては、生体は困りますよね。不要なタンパク質だけを分解して、必要なタンパク質は分解しない機能が必要です。

ユビキチン・プロテアソーム経路

そこで活躍するのがプロテアソーム経路です。

プロテアソーム経路は選択的で、特定のタンパク質を選んで分解します。

特定のタンパク質とは、異常なタンパク質や損傷を受けたタンパク質です。

つまり、プロテアソーム経路は、いらないタンパク質を除去するのが目的です。そのため、選択的に作用します。

ポイント

プロテアソーム経路は、不要なタンパク質を選択的に狙い撃ちして除去する

 

分解すべきタンパク質をどう識別するかというと、ユビキチンという目印を使います。

折りたたみ構造が異常なタンパク質や、不要なタンパク質、損傷を受けたタンパク質にユビキチンが連結(ユビキチン化)して、プロテアソームに合図を送ります。プロテアソームがユビキチンを識別して、タンパク質を分解します。不要なタンパク質は分解され、ユビキチンは再利用されます。

するともっと根本的な次の疑問がわいてきますよね。

ユビキチンはどうやって分解されるべきタンパク質に連結するのだろう?

 

折りたたみ構造が異常なタンパク質や損傷を受けたタンパク質の表面には、ユビキチンを付加する酵素にとって目印となるシグナルがあるのです。シグナルとは、犯人だとわかる特徴のようなものです。

このシグナルは、正常なタンパク質では内部に隠されています。ユビキチンを付加する酵素は、異常のあるタンパク質特有のシグナルによって、付加すべきタンパク質を識別できるのです。

生体は実によくできていますよね。

ユビキチンを目印に使うので、この経路をユビキチン・プロテアソーム経路といいます。



【補足】リボソームとリソソームの違い

ここで、少し補足しておきます。

細胞小器官にはリボソームもあり、リボソームとリソソームの違いは何だろうと混乱しますよね。

出典:https://www.thinglink.com/scene/843571408968613890

両者はどちらも細胞小器官ですが、働きは異なります。

リボソーム:タンパク質を合成する場所

リソソーム:タンパク質など物質を分解する場所

 

つまり、

リボソームはつくるところ、

リソソームは分解するところですね。

 

ちなみ前半で登場したプロテアソームは、細胞質にも核にも存在する大型の分解装置です。

生体の重要な遺伝情報を持つ核内での異常をすみやかに処理できるように、プロテアソームは核の中にもいるのかもしれませんね。

 

今回の記事では、イメージを持ってもらうため、私の言葉でかみ砕いて説明しました。詳細なメカニズムはもっと、もっと、もっと複雑です。

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【その他の参考資料】

リソソームの生理機能制御とリソソーム病における異常

プロテアソーム  細胞がタンパク質を解体する仕組み

 

バイオに関する解説記事はこちらにまとめています

【バイオの部屋】大学生物・高校生物の解説記事

 

公開日:2019年8月10日