【光造形3Dプリンタ】レジンの温度を上げる理由はなぜだろう?

光造形3Dプリンタで、レジンの温度を上げる理由はなぜだろう?と思いました。

それぞれのレジンには最適な温度域というものがあります。

一般に、30℃前後に温めてから使うように、とされています。

いろいろ調べて考えた結果、

温度を上げることで、レジンの粘度、硬化(重合)する速度が変わるから

という結論にいたりました。

この重合という言葉には膨大な化合物がついてきますが、それは今回のメインテーマではないので、

簡単な言葉を使って、光造形でレジンが硬化する仕組み、レジンと温度の関係を見ていきます。



光造形3Dプリンタで樹脂(レジン)が硬化する仕組み

光造形樹脂の主な要素は4つ

  • モノマー
  • オリゴマー
  • 重合開始剤
  • UV光

 

樹脂によって異なりますが、光造形レジンの中身は主に上の4つの要素からなります。

 

モノマーというのは、樹脂が固まるうえで必要な材料です。

たとえると、ビーズネックレスのビーズがモノマー完成したネックレスが光造形の造形物です。

 

モノマーがある程度結合したものが、オリゴマーです。ビーズが4個つながったようなイメージです。

光造形では、モノマー、オリゴマーがあらかじめそろっていて、ここに何らかのきっかけで反応が起こることで、それぞれがくっつき、巨大化していきます。

何らかのきっかけとなるのが、下の図の赤丸、ダイナマイトです。

 

もちろん、本当にダイナマイトを使うわけではありません。専門用語は重合開始剤といいます。

モノマー、オリゴマーは自分たちでは手をつなげないため、重合開始剤の力を借りて、結合していきます。

このプロセスを「重合」といいます。

簡単にいうと、小さな分子が集まって、大きな集合体をつくるのが重合です。

1つ1つのビーズを糸に通してビーズネックレスを作っていくイメージです。

 

ただ、重合開始剤は最初からダイナマイトのような力を持っているわけではありません。

重合開始剤が力を発揮するためには、紫外線の力が必要です。

紫外線を浴びて初めて、ダイナマイトが発火して、周りに働きかけることができるようになります。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]「光造形」といわれるわけはここにありますね。[/word_balloon]

 

この時に点火される「火」を、専門用語でラジカルといいます。

通常、電子は2つがペアになっていますが、相手のいない電子(不対電子)をもつ分子や原子をラジカルといいます。

重合開始剤は紫外線を浴びると、元気なラジカルを生成します。

ペアの電子が欲しい、さみしいラジカルは周囲のモノマー、オリゴマーに声をかけ、手をつないでいきます。

 

 

上記の重合反応によって、液体樹脂がわずか数秒で固体へと変化します。

 

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]

稼働中の3Dプリンタを見るだけでは想像できないことですが、液体レジンの中で上記のような反応が起きているのはおどろきですね。

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重合と温度の関係は?

重合開始剤の種類はいろいろですので、簡単な比較はできませんが、重合に与える温度の影響を示した論文の一部を引用します。

結論から書くと、温度が高くなるにつれて、重合反応が加速するようです。

(天井温度という言葉があるように、逆に温度を上げすぎると反応の進行が止まります)。

 

これは温度ごとに、縦軸にモノマー転化率(反応の進行度)、横軸に時間を表したグラフです(スチレンを例にしたもの)。

同じモノマー転化率を得るのに、温度が高くなるにつれて所要時間が短くなっています。

つまり、温度が高くなるにつれて、重合反応が加速していることがわかります。

Effects of Temperature on Styrene Emulsion Polymerization Kinetics

参考論文URL:Effects of Temperature on Styrene Emulsion Polymerization Kinetics

 

▼これは別のポリマーを例にしたものですが、

温度が上昇するにつれて、重合反応が加速していることがわかります。

具体的には、30℃では40.8%のモノマー転化率を得るのに120時間かかっているのに対し、60℃では61.9%のモノマー転化率を得るのにわずか21時間となっています。

It is well known that temperature plays a vital role in controlled polymerization systems.
As shown in Table 2, well-defined PANs were obtained in all cases, and the polymerization rate increased with temperature (from 30 to 60˝C) as expected.
For example, 40.8% of monomer conversion was achieved within 120 h at 30˝C (Entry 4 in Table 2) while 61.9% of monomer conversion was obtained within 21 h at 60˝C (Entry 1 in Table 2).
(ICAR ATRP of acrylonitrile under ambient and high pressureより引用)

ICAR ATRP of acrylonitrile under ambient and high pressure

参考論文URL:ICAR ATRP of acrylonitrile under ambient and high pressure

 

上記の引用文と表より、この重合開始剤の場合、温度が上がるにつれ、重合に要する時間が短くなる、つまり重合反応が加速していることがわかります。

 

要するに、使う樹脂によって適切な温度域があり、

光造形樹脂の場合は、レジンの温度を30度前後に上げることで、分子の動きが活発になり、粘度が変化し、重合反応が加速する、ということでしょうか?

 

とても消化不良なのですが、このあたりでやめておきます…

つづきは特許明細書を読んだらまた記事にします。

 

光硬化性樹脂の詳細に興味がある方はこちらをご参照ください。

UV硬化樹脂(光ラジカル重合)

 

 

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公開日:2020年1月6日