細胞接着/細胞間結合の種類・役割をわかりやすく解説【もう混乱しない!】
細胞と細胞が接着する結合様式は、文字だけ追ってもわかりづらいですよね。
文字を追うのはやめましょう!
各結合の役割をざっくりイメージしてから、細部を調べることでぐっと理解しやすくなると思います。
今回は、細胞間結合について、イメージやイラストを多めに使いながらご紹介します。
目次
細胞接着の種類
細胞接着は次の3種類に分類されます。
わかりにくい概念ですが、各結合の役割に着目すると、理解しやすくなります。
まずざっくりしたイメージを持つために、一言で表現してみました。
密着結合(タイトジャンクション):細胞をバリアする
ギャップ結合(ギャップジャンクション):細胞間で物質のやりとりをする
固定結合:細胞をしっかり固定する
少しはイメージがわきますでしょうか?
1つずつ見ていきます。
密着結合(タイトジャンクション)
タイトジャンクションは、細胞と細胞をぴったりと隙間なくつなげるため、有害物質が侵入するのを防いだり、大事な物質が漏出するのを防ぐ役割があります。
まさに細胞をバリアする役割を果たしています。
タイトジャンクションは、上皮細胞の頂端部(apical=アピカルといいます)に存在します。
これはサイドから見た状態。
細胞の頂端部に存在するため、細胞の頂端部と基底部が厳密に隔てられています。
タイトジャンクションがあるおかげで、上図で腸管から栄養を吸収するタンパク質Aは頂端部にのみ存在し、組織や血管へ栄養を輸送するタンパク質Bは頂端部へ移動することができません。
タイトジャンクションにはバリア機能のほかに、このような隔てる機能(フェンス機能)があるんですね。
👇細胞を上から見ると、細胞の周囲を紐が取り囲んでいるように見えます。この紐に見えるものがタイトジャンクションです。
タイトジャンクションを形成するのは、クローディンとオクルディンというタンパク質(接着分子)です。
クローディンには27種類のサブタイプがあることがわかっており、それぞれ異なる働きを持っています。
たとえば、
クローディン1が欠損すると、バリア機能が低下し、
クローディン5が欠損すると、血液脳関門の透過性が亢進することがわかっています。
このような特性は創薬、とくにDDS(ドラッグデリバリーシステム)に応用できそうで興味深いです。
クローディン1を制御→皮膚のバリア機能低下→経皮吸収が促進される
クローディン5を制御→血液脳関門を薬剤が通過しやすくなる
ちなみに、クローディン1をノックアウトさせたマウスでは、生後すぐに脱水し、半日ほどしか生存できません。
クローディン1が私たちの身体から水分が出ていかないようにバリアしてくれているのがわかりますね。
ギャップ結合(ギャップジャンクション)
細胞間の結合様式のうち、
ただ一つ、細胞間の情報伝達を担うのがギャップジャンクションです。
イオンや水分を細胞間でやりとりします。
駅直結のデパートへ続く連絡通路のイメージですね。
通路、つまりトンネルに相当するのは、コネクソン、
トンネルを構成するタンパク質がコネキシンです。コネキシンが6量体を形成したものがコネクソンです。
ギャップジャンクションは、常に開いた状態にあるわけではなく、生体の状況に応じて閉じたり開いたりします。
たとえばストレスが発生したとき。
ギャップジャンクションを介して、隣接する細胞へダメージが伝達されることで、一部の細胞に致命的なダメージが起こらないようにしています。
痛みを全体で分かち合っているわけですね。
一方で、解決不能なストレスが発生したときは、
ギャップジャンクションが閉鎖され、1つの細胞のアポトーシスのみ実行され、組織全体にダメージが及ぶのを回避しています。
組織全体を守るために、自分が犠牲になるということですね。
状況に応じて柔軟に生体内環境を調整しているギャップジャンクションが機能しなくなると、生体環境が破綻することが想像できますね。
ギャップジャンクションが特に活躍するのが心筋です。
心筋細胞が同期的に収縮できるのはコネキシンがあるおかげなのです。特に、コネキシン43は心臓全体に存在し、心筋細胞の同期性収縮に必須のものです。
固定結合
固定結合は、細胞と細胞、または細胞と基質(細胞外マトリクス)が接着するだけでなく、細胞内部の細胞骨格ごと結合させることをいいます。
固定結合についてみる前に、細胞骨格について補足しておきます。
細胞骨格とは?
細胞骨格と聞くと、固いイメージがありますが、実際はそうではありません。身近で分かりやすいものとして、お手玉があります。
お手玉の玉を一か所に集中させると硬くなったり、
圧力を加えなければゆるい状態になったりと、
お手玉の形状は変化するものの、全体の構造は維持されますよね。
細胞骨格も同様で、状況に応じて形状を変えられるよう、細胞の三次元構造をサポートしています。
細胞骨格は、骨であると同時に、筋肉でもある、動的なものなのです。
細胞骨格には3種類あります。
微小管
アクチンフィラメント
中間径フィラメント
このうち、固定結合に関係するのは、アクチンフィラメントと中間径フィラメントです。
上図のように、アクチンフィラメントは細胞表面に存在するのに対し、中間径フィラメントは細胞全体に存在します。
アクチンフィラメントは細くて柔軟で、特に細胞表面が関係する運動に関与しています。
中間径フィラメントはロープのように強固で、細胞を引き伸ばすような外力から細胞を守っています。
固定結合は一見すると複雑ですが、
接着タンパクがアクチンフィラメント、中間径フィラメントのどちらと手をつなぐかによって整理するとわかりやすくなります。
固定結合の種類
固定結合には、接着帯、デスモソーム、ヘミデスモソームの3種類があります。
どの接着タンパクが、どの細胞骨格と手をつなぐかによって分類されます。
接着帯とデスモソーム(接着斑)
固定結合のうち、接着帯とデスモソームはカドヘリンが連結する相手によって分類されています。
カドヘリンがアクチンフィラメントと連結する=接着帯
カドヘリンが中間径フィラメントと連結する=デスモソーム(接着斑)
※接着帯は、接着結合、アドヘレンスジャンクションともいいます。
このように、固定結合は細胞内部の細胞骨格も含めて細胞同士が結合することをいいます。
ちなみに、デスモソームで活躍するカドヘリンは、正確にはデスモグレインといいます。
ここでのポイント:カドヘリンが手をつなぐ相手は誰か?
カドヘリンがアクチンフィラメントと手をつなぐ→接着帯
カドヘリンが中間径フィラメントと手をつなぐ→デスモソーム
ヘミデスモソーム
残るヘミデスモソームは、連結する相手はデスモソームと同じ中間径フィラメントですが、接着タンパクがインテグリンとなります。
また、接着する場所が、細胞と基質となります。
インテグリンが中間径フィラメントと連結する=ヘミデスモソーム
接着部位は、細胞と基質
以上で述べた、タイトジャンクション、ギャップジャンクション、固定結合を1つの図にまとめたのがこちら。
いろいろ見た中で、これが構造も含め、一番わかりやすかったです。
バイオの勉強は、専門用語が多くてウッとなることがありますが、1つずつ理解していくことで確実に理解が深まりますね。
【参考】
タイトジャンクションバリア制御によるバイオ医薬品の吸収促進技術開発に向けて
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