【感想】『むかわ竜発掘記』で味わう4つのゾクゾク【子供の教育用にもおすすめ】
恐竜博2019に行く前に、子供の科学2019年8月号で予習していたときに『むかわ竜発掘記』を知りました。
恐竜博2019には間に合いませんでしたが、行った後に読んだところ、最後まで止まりませんでした。
日本で初めて見つかった恐竜の全身骨格。その裏側をドキドキしながら楽しめる作品です。興奮、鳥肌の立つラスト。
ストーリーとして楽しめるだけでなく、子供の教育効果も期待できるマンガです。
具体的には、
・恐竜好きを超えて、恐竜学に興味を持つきっかけとなる
・統計学・地質学・解剖学・数学に興味を持つきっかけとなる
・自分で調べたくなる
などです。
わが家は4歳でまだ難しいのですが、私が完全にはまってしまいました。
目次
『むかわ竜発掘記』で味わう4つのゾクゾク
『むかわ竜発掘記』で私が特にゾクゾクしたのは次の4つです。
・恐竜の化石かどうかを特定する
・どの恐竜かを特定する
・尻尾の向きから残された胴体を予測
・全身骨格が見つかるまで
以下、ネタばれを最小限に解説していきます。
【ぞくぞく①】恐竜の化石かどうかを特定する
穂別博物館に、研究者佐藤たまき先生がやってくるところから物語が始まります。
このオープニングを少し読んだら、もう止まりませんでした。
首長竜だと思われる標本の中に、恐竜と思われる椎骨を見つけ、クリーニングするシーンはゾクゾクの連続です。
恐竜と、首長竜をどのように区別するのか?について、解剖学的な観点から子どもにもわかりやすい描写になっています。
これは恐竜学に興味を持つきっかけにもなると思いました(私は興味を持ちました)。
【ぞくぞく②】どの恐竜かを特定する
穂別博物館で見つかった化石が恐竜化石にほぼ間違いないとわかり、今度は小林快次先生が恐竜を特定します。
見つかった化石は、トリケラトプスを代表とする鳥盤類であることは間違いないと考えられていました。
鳥盤類を細分化すると、イグアノドン、パラサウロロフスなどの鳥脚類があります。
「化石=鳥脚類」とわかれば、「化石=鳥盤類」➡「化石=恐竜」という図式が成り立ちますよね。
見つかっている尾椎の化石から、果たして鳥脚類なのかどうか?を特定していくシーンもゾクゾクしました。
ネタばれをしないために、詳細は割愛しますが、最終的に小林先生が化石が鳥脚類のものであると特定した根拠材料をつくっていくプロセスが特に興味深かったです。
子どもが恐竜学に関心を持ちやすいように、実にうまく書かれているなあと感じたところです。
【ぞくぞく③】尻尾の向きから残された胴体を予測
見つかった化石は、尻尾の一部でした。
化石発見現場で化石の発掘を始めるとき、
でてくる化石の大きさによって、地層に残されているのが胴体なのか、尻尾なのかがわかる部分もゾクゾクでした。
👆の写真はイメージですが、
赤枠で囲んだ部分の骨がすでに見つかっている化石だとして、
これから出てくるのが大きい骨だった場合➡胴体があるとの判断
小さい骨だった場合➡尻尾があるとの判断
というあたり、なるほど!と興奮でした。
【ぞくぞく④】全身骨格が見つかるまで
全身骨格が見つかるまでのシーンははやる気持ちからぺージをめくるのが早くなりました。
興奮とともに、恐竜の情報がどのようにわかっていくのか、そのポイントがちりばめられていて勉強になります。
たとえば、
・大腿骨は骨の中で最も大きいので、全長と体重の推測に役立つこと。
・海の地層からみつかるという特異性
・歯の化石から頭部の位置を推測していくところ
ここも、なるほど!そうなのか!と前のめりになります。
このほか、
予算をとる難しさ
地元で理解を得る難しさ
など、むかわ竜の全身骨格が見つかった背景には、たくさんの人の奮闘があったことがわかります。
恐竜化石の発掘というと、野外でひたすら作業を続けるというもの、というイメージでしたが、実際は、
・膨大な資料を読み込む
・統計学・解剖学・地質学・数学を駆使する
など、複数の学問にまたがっていることがわかります。
このマンガは、
発見にいたるまでは、たくさんの人の血と汗の結晶があることがわかると同時に、
恐竜学という1つの学問に興味をひきつけるものでもありました。
後者が私にとって特にインパクトがありました。
『むかわ竜発掘記』のもつ教育効果
繰り返しですが、子どもに「学びたい」気持ちに火をつける可能性があると思います。
息子は4歳でまだ読めないのが残念ですが、自分の子どもが今このマンガを読めたら、かなり没頭するのではないかと思いました。
このマンガの影響で、恐竜好きな子どもがさらに踏み込んで、恐竜学に興味を持つ可能性は十分にあると思います。
私が小学生の頃に読んだら、かなり感化されたはずです。
子どもによっては、小林快次先生の研究成果に興味を持ち、小林先生の研究成果を調べ始めるかもしれません。
上記のように感じたのは、息子の「ある行動」が理由です。
恐竜にどんどんはまる息子に、ある日、図鑑の調べ方を教えました。
巻末の索引からぺージを特定して、調べたい恐竜のぺージにたどりつく方法を教えたのです。
索引から調べたい恐竜を探す
➡複数あるぺージ番号のうち、太字の数字を確認
➡ぺージにたどり着く
カタカナがある程度わかることが前提になりますが、だいたいのカタカナがわかれば、4歳でも自分で調べられます。
それ以来、30分調べてつづけていることもあります。
調べることで、知識が増えるのが楽しいようです。調べる行為自体も楽しんでいる印象です。
こうなると、子どもが勝手に調べてくれるので、親は楽なんですよね。
『むかわ竜発掘記』には、子どもが自分で調べたくなる気持ちに火をつける可能性があると思いました。
恐竜に没頭している子には、ぜひ読ませてあげたいマンガです。
たとえば、
一部の骨から全長や重さがわかることから、数学への興味につながるかもしれません。
小林先生が膨大な資料を読み込むシーンから、統計学に興味を持つかもしれません。
息子には、「小学生になったらぜひ読みなよ」と話しています。
『むかわ竜発掘記』はこの本がもとになっているようですね。
映画化/ドラマ化されたら嬉しいですね。