「スマホ脳」を読んだ感想・レビュー|子供にスマホはちょっと待った!
最近、非常に読み応えのある新書を読みました。
ベストセラーになっている「スマホ脳」です。
この記事では「スマホ脳」を読んだ感想、印象的だった下記の点を中心にご紹介します。
印象的だったポイント
・スマホを手放せなくなる理由
・SNSの「いいね」が報酬中枢をスイッチオンする怖さ
・幼児にタブレットを与えない方が良い理由
いやあ、すごく面白かったですが、ぞっとする本でもありました。
幼児~小学生のお子さんをお持ちの方は読むと「ぞっとした」理由をわかっていただけるかなと思います。
目次
スマホを手放せなくなる理由
なぜ私たちは、10分に1度はスマホを触ってしまうのか?メールを返信しようと思ってパソコンを開いたのに、ついSNSを開いて、目的もなくタイムラインを追ってしまうのか?
本書によると、その秘密の1つは、私たちの祖先が生きたのが、食料が常に手に入らない時代だったことと関係しています。
食料を入手するには、新しい環境、新しい場所に意識を向けなければなりません。これは人間が生き抜くために形成された本能だったとされています。
新しい情報に接触したとき、ドーパミンが産生されて「もっと知りたい」と思わなければ、人間は食料にたどり着けなかったわけです。食料に限らず、ライオンが潜んでいそうな場所に関する情報を「知りたい」と思わなければ、生き残れませんよね。
狩猟採集民だった祖先が、生き残るための情報にアクセスできるよう、脳は新しい情報を欲していたということです。
現代でこれを満たしてくれるものは何かというと、スマートフォン、SNSです。
私に限らず、多くの方が次のような経験をされていると思います。
つまり、新しい情報を知りたい欲求にあらがえない脳の特性にスマホがつけこんで、「ハッキング」しているわけです。
進化の歴史といっても、大昔の脳の性質が今に引き継がれているの?と思われるかもしれません。
地球の歴史を1年間に例えるならば、ホモ・サピエンスの誕生は大晦日からわずか30分ほど前なのです。そして、もうすぐ年が変わるという数分前で農耕が始まったことになります。
この100年で人類が経験した技術革新による大変化は、長い人類の進化の歴史でたった数秒、いや1秒未満かもしれません。
つまり、インターネット、スマホの登場による生活習慣の激変に、脳はまだ適応しきれていないということです。
SNSの「いいね」が報酬中枢をスイッチオンする怖さ
本の中で、次の実験が紹介されていました。
ある音が聞こえた時に必ずジュースがでる実験、ある音が聞こえても時々しかジュースがでない実験の2パターンをサルに対して実施したところ、後者の時々しかジュースがでない時によりドーパミンが放出されたそうです。
しかも、ジュースが出るときよりも、音が聞こえた時点でドーパミン量が増加したようです。
人間でも同じ傾向がみられるようです(人間の場合はお金で実験)。
どういうことかというと、
・報酬が得られる「かもしれない」不確かな状況で
・報酬が得られる「かもしれない」サインがあった時に
ドーパミンが増えるということです。
この「もしかしたら」を巧みに利用しているのが、ツイッター、FacebookのSNSで使われる「いいね」「リツイート」です。
ツイートを投稿して1時間もたたずに、何個のいいねがついたか、何件リツイートされたかがなぜ気になってしまうのか?朝起きて最初にSNSを開いて何人フォロワーが増えたかなぜ確認してしまうのか?
いいねがついているか、リツイートされている「かもしれない」、フォロワー数が増えている「かもしれない」。この「かもしれない」という不確かな情報が、私たちに無意識にスマホを開かせるわけです。
本当にいいねがついてたり、フォロワー数が増えていたりしたら、承認欲求が満たされ、脳はさらなる承認欲求を求めて同じことを繰り返したくなるわけですね。
SNS、ブログは個人の力を高め、個人でも発信できる社会をもたらしました。しかし同時に、脳をハッキングするツールにもなりえると考えると、使用頻度を減らそうという気になりませんか?私は激減しました。
驚きなのが、Facebookのいいね機能を開発した担当者は、のちに後悔のコメントをしていることです。
Facebookだけでなく、アップルの開発者が「自分たちが創ってしまったもの」について真夜中にうなされるなど、後悔をにじませるコメントは衝撃的でした。
スティーブン・ジョブズが子供にiPadを触らせなかったのは有名な話です。本を読むまでは、ジョブズだけの事例かと思いましたが、開発者たちも後悔していること、ビル・ゲイツは子供が14歳になるまでスマホを持たせなかったことが書かれていました。
では、シリコンバレーの「先人」たちが、子供にスマホ、タブレットを触らせなかったのはなぜでしょうか?本書はその問いにも答えてくれました。
幼児にタブレットを与えない方が良い理由
結論から言うと、スマホを使いたいという衝動が生まれたとき、大人は理由を思い出して抑えられます。
しかし、10代の子供では衝動にブレーキをかける脳のある部分がまだ十分に発達していないためです。
もう少しわかりやすい例で考えてみます。
衝動にブレーキをかけるのが、脳の前頭葉という場所です。しかし前頭葉は成熟するのが一番遅く、完全に発達するのは25~30歳まで待たなければなりません。
これを子供に当てはめると、ゾッとする事実が浮かび上がります。
子供は脳に生まれた衝動にブレーキをかけるのが極めて難しいということです。
逆をいえば、子供は大人よりスマホの魅力に取りつかれやすいということです。
レストランで終始スマホを見る子供と笑顔の母親
ある時、ちょっとぞっとする光景を目の当たりにしました。
レストランで3人家族がテーブルで食事を待っていました。食事が来るのを待つ間、7歳くらいの子供はスマホをいじっていて、夫婦は話しています。食事が来るまでスマホをいじっている子は見かけたことあるので、このご家族もそうなのかな~と思っていました。
しかし全員分の食事が来た後も、子供は当たり前のようにスマホの画面を見続けています。さらに、母親と思われる女性は笑顔で子供に話しかけますが、子供の視線はスマホに向いたまま。
外食で最初から最後まで子供の視線がスマホに向いていて、親はそんな子供に何事もないように話しかけているその光景を見た時、私は言葉を失いました。
このお子さんから、スマホを取り上げるのはもう無理ではないか?と思いました。
スマホを触りたいという欲求を子供が抑えるのは大人よりはるかに難しいと知っていたら、レストランや移動中の電車の中で子供に安易にスマホを見せる、持たせることはしないのではないでしょうか?
スマホを子供に与えて親が得る束の間の「楽な時間」「ゆとりのある時間」の積み重ねで、親にスマホを取り上げられて泣き叫ぶ子供、衝動的になる子供が生まれるのだと思います。
小児科の専門誌『Pediatrics』は、遊びのツールとしてタブレットやスマホを長時間使う子供は、算数や理論科目を学ぶために必要な、紙とペンで書くという運動技能を習得できないと警告しているようです。
アメリカの小児科学会も、「1歳半未満の子供はスマホを制限すべき」と警告していますが、1歳半という不思議な年齢となっているのは、2歳時の8割はインターネットを利用していることが前提にあります。
うちはスマホの利用をかなり制限していて、子供が勝手にスマホを持つことは許可していません。一緒に写真を見たり、アニメを見たりするときのみ、スマホを使用しています。
スーパーでもベビーカーに座る1歳くらいのお子さんにスマホを渡しているお母さんを時々見かけますが、この本を読んでからは、とても子供にスマホを渡せないと思いました。
私が特に怖いと思ったのは、スマホが若者、幼児に与える本当の影響について、検証・分析するのには時間がかかるということです。つまり、研究が追いつくことはありません。
現時点でスタートした研究の結果が明らかになるのは5年後だとした場合、5年後にはスマートフォンはさらに進化しています。メタバースやVRなどスマホと連動して使うテクノロジーも加わって、本当の影響、実態はさらにわかりにくくなるでしょう。
私たちがスマホに費やす時間は増えていくけど、研究が追いつくことはないので、「気をつけた方がいい」と筆者は警笛を鳴らします。
最後まで読んだらスマホ、SNSの時間が減った(でも難しい)
本書を中盤まで読んだ時点で、スマホに触れたくなるときの自分の心理が手に取るようにわかるようになりました。個人ツイッターに費やす時間も減りました。
でも…難しいです。スマホ、PCに触れずにいるのが、どれだけ難しいことか。
小学生以下の子供だったら…と想像すると、ぞっとします。
息子にタブレット教材で学習という選択肢を考えたこともありましたが、小学生のうちは積極的に考えることはしないと思います。
この本は、どの年代の方も読んだ方がいいと思いますが、子育て世代、特に幼児期のお子さんをお持ちの方も読んでおいた方がいいと思いました。
後半では、スマホ依存を減らすためのアドバイスも掲載されています。
スマホ、SNSの是非以外にも、読み物として非常に読み応えのある本でした。私は第3章からページをめくる手が止まらなくなりました。特に進化の歴史とからめてスマホ、SNSが脳の報酬中枢を乗っ取るあたりの説明はとても興味深いものでした。
読むときっと、あなただけでなく、家族みんなが心身共に健康に近づくでしょう(多大な努力・強い決意を必要としますが)。
だまされたとおもって読んでみてください。いや、子供がいる方は必ず読みましょう!