【親必読】『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』を図解付きでレビュー・感想

 

この記事では、

『RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる』を読んだ感想・特に響いたことをまとめました。

 

この本は次の方に特におすすめです。

 

●子供がいるすべての方

●今から〇〇をやっても遅いと思っている方

●時代が変化しても適用できる力をつけたい方

●先取り教育に関心のある方・取り組んでいる方

 

この本の要点をシンプルにまとめると、

 

●スポーツ選手・芸術家など天才と言われる人たちの多くが、早期の専門特化よりも、深さを犠牲にして幅を広げた寄り道・遅咲きタイプである

●非効率に見え、後れを取っているように見えるやり方が最も効果的な学習方法である

●何かをするのに遅すぎることはない

 

変化のスピードが激しい時代で、どう子供の教育に取り組んでいけばいいのか?

必ず参考になります。

私にとって、2020年で読んだ本で最も衝撃的な本になると思います。

RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる

RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる

デイビッド・エプスタイン
2,048円(04/26 23:02時点)
発売日: 2020/03/26
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先取り・ヒントの弊害と親の意識改革

「速く学ぶか、ゆっくり学ぶか」と題した4章は、

幼児期の先取りに関心のある方にとって、とくに参考になるはずです。

 

4歳でたし算・ひき算をマスター

5歳でかけ算・わり算、漢字は小2まで完了。

 

幼児期の先取りは、やればやるほどできることが増え、

親は子供の可能性に期待感を膨らませるものです。

 

しかし、ヘッドスタートのような早期教育を受けても、

一時的な学習面での優位性はすぐに消えて、たいていの場合は、完全になくなってしまうことが、

早期教育プログラムを評価した研究でわかっています。

 

この理由は、

文字・算数などは閉じられたスキルだから。

決まったやり方を繰り返すことですぐに習得できるからです。

幼児期から先取り教育をしていたけれど、小学校に入ってすぐに追いつかれてしまったという話は耳にしますよね。

 

生後6ヶ月で歩けるようになった子、生後11か月でつかまりだちをした子、

その時には「大きな差」を感じても、早い時期に歩けるかどうかは重要でないことが後でわかりますよね。

これと同じことです。

 

むしろ、大切にしたいのは開かれたスキル

このスキルは目には見えませんし、進歩も感じにくいものです。

開かれたスキルとは、

 

ヒントがなくても自分なりに考えようとする習慣

自分なりに考えたヒントを関連づける方法

さまざまな問題に対し、根本的な構造から共通性・関連性をとりだすこと

 

こういった取り組みは、

目に見える進歩を感じにくい

遅れを取っているような気がする

と感じがちですが、

 

耐久性があり(長持ちし)、柔軟な(応用範囲の広い)学びのためには、

速くて簡単なやり方は、明らかに問題となる。p120

 

とはっきり書かれています。

 

目に見える進歩があると学びが進んでいる感覚がありますが、

深い学びは目に見える進歩からはわからないものだといいます。

 

 

前へ進む先取りよりも大切にしたいのは、

さまざまな問題に対し、根本的な構造から共通性・関連性をとりだすこと。

 

このスキルは複雑で、時間がかかりますが、

未知の状況へ適用、つまり遠くの領域へ知識を転移できる思考方法だといいます。

 

子供が「親切な環境」ではなく、

これまでの解決方法を当てはめられない「不親切な環境」で問題解決能力を発揮していくためには、

すぐに役立たないように思えるような、開かれたスキルに焦点をあてる必要があるということ。

 

これは、親にとって簡単なことではないと思います。

先取りで目に見える進歩があればあるほど、その方法を続けたくなるからです。

 

短期的な成果を犠牲にして「長く使える柔軟なスキル」の習得を選べるかどうか、

親の意識改革が必要ともいえます。

 

このような開かれたスキルを獲得するうえで、ヒントの使い方には注意が必要です。

 

ヒントは子供が成長するために必要な障壁を取り除いてしまう可能性があるからです。

アカゲザルを対象に、ヒントの有無で結果がどうなるか検証した実験でも、

「ヒントを使うと、持続的な学びは得られない」ことが示されています。

 

子供を思うなら、

 

すぐにヒントを与えず、とことん悩んで汗をかいてもらうこと、

すぐに成果のでる学びではなく、親が「持続的な学びになるか」を評価できるかどうか

 

これが大切といえます。

 

4章は、子供の教育において特に重要な示唆を与えてくれます。

 

今は目に見えないけれど、子供の将来にインパクトのある取り組みはなんだろうか?

 

長く使える柔軟なスキルは何かを考えるために、

親が立ち止まって考えること・先取り誘惑に勝つことの重要性を感じました。

 

上記で書いたことは「はじめに」で次のように端的にまとめられています。

認知心理学者たちから教えられたことも驚きだった。

永続的な知識を得るためには、ゆっくりと学習するのが最善だということだ。

たとえ、その時の試験結果や成績が悪くなっても、そうするのがよいという。

この点については膨大な研究があるが、ほぼ無視されている。

逆に言うと、最も効果的な学習は非効率に見え、後れを取っているように見えるということだ。(p19)

 

アナロジー思考を武器にする

では、これまで直面したことのない未知の問題に対して、どのように切り込めばいいのか?

 

この代表例として、ヨハネス・ケプラーの話は大変興味深いものでした。

重力の概念も、惑星を動かす推進力の概念もわかっていなかったときに、ケプラーは惑星運動の法則を見出しました。

ケプラーが使ったのが、アナロジー思考

 

アナロジー思考とは、

表面的には関係ない「かけはなれた事象」に共通点を見つけ、

別の事象にあてはめて考えることです。

ひとつのくくりにとらわれず、

ある事象を、歴史の事件と比べたり、自然現象と比べたりして、

共通点を探り、発想を広げていく手法で、

新規ビジネスのヒントにもなる思考法です。

 

たとえば、

「在宅ワーカー」と「Amazonで物販ビジネスをする人」の共通点を考えると、

「中間プロセスの排除」であることがわかります。

 

もう1つネットの事例にヒントをもらったのが、

「ハンバーガー好きな人」と「アメリカンドッグ好きな人」の比較。

 

ハンバーガー好きな人 ⇒手が汚れても構わない ⇒居酒屋では手羽先を注文すると推測

アメリカンドッグが好きな人 ⇒手を汚したくない ⇒居酒屋では唐揚げを注文すると推測

「手を汚したくない」人は、「現金を使いたがらない、キャッシュレス派」と推測できます。

居酒屋の購買データを分析することで、

効率よく新規カードに加入してくれそうな人にだけアプローチできるかもしれません。

 

アナロジー思考で欠かせないのが抽象化

抽象化できなければ、表面的には異なる事象に共通点を見つけられません。

 

「抽象化」することによって、

表面に見える問題と、根底にある問題を見分けて、問題解決をはかれるようになります。

 

ちょっとざっくりな説明をすると、

表面的なわかりやすい部分 = 具体

根底のわかりにくい部分 = 抽象

 

ノースウェスタン大学のさまざまな専攻の学生に分類わけをしてもらったところ、

根底にある構造の分類ができる学生はかなり少なかったという結果が出ています。

 

アナロジーに加えて大切なのが、多様な経験

経験に幅があればあるほど、

取り出せる「共通点」が増え、未知の事象の問題解決、ブレイクスルーにつながります。

 

 

 

抽象化できるだけでもダメ。

経験の幅も大切なことが一貫して強調されています。

 

✖ 抽象化できない

✖ 経験の幅が狭い

これだと、

分野横断的に考えることが難しく、

遠いところからヒントをひっぱってくるアナロジー思考も難しいです。

 

予期せぬ問題を前に、どれだけの幅(レンジ)のアナロジーを使えるかによって、

どれだけ新しいことを学べるかが決まった。(p166)

 

こんな図解の方がわかりやすいかもしれません。

 

アナロジーの幅が広く、多様な経験があるほど、

異なる事象がつながりやすくなります。

抽象度があがればあがるほどアナロジーの幅は広がり、ほかのアナロジーと重なりやすくなります。

 

「幅」の大切さは、ヒット論文にみられる共通性からもうかがえます。

発表から10年間、多くの研究者に引用される「ヒット論文」は、

一般的な知識の組み合わせを大量に用いながら、一般的でない知識の組み合わせも取り入れていることがわかっています。

 

「一般的でない知識の組み合わせ」を取り入れた論文は、発表時は軽視されがちで、権威の低い学術誌に掲載されるようですが、

長期的には被引用数で上位1%に入る割合がほかの論文よりも高くなっているようです。

 

このことからも、「幅」が創造性に必要なことがわかりますね。

 

自分に合った仕事を見つける:マッチ・クオリティを高める秘訣

誰もが自分にあった仕事につきたいと願うものですが、

現実は、天職にたどり着ける人は多くありません。

 

マッチ・クオリティが高い、すなわち自分に合った仕事を見つけるうえで、

早期の専門特化の是非について実施された研究は知っておく価値は十分あります。

 

大学に入学前に専攻を決めるイングランドとウェールズの学生と、

最初の2年間はさまざまな分野を学ぶスコットランドの学生とを比較し、

早期の専門特化とマッチ・クオリティの関係を研究したグループがあります。

数千人の卒業生を比較したところ、

早期に専門特化したイングランドとウェールズの大卒者の方が、遅くに専門特化したスコットランドの大卒者よりも、高い割合で専攻とは全く別の分野に仕事を変えていたことが判明しました。

 

収入面でも、スコットランドの学生はすぐに追いついていることもわかりました。

 

つまり、早期に専門特化したイングランドとスウェーデンの学生は、自分の仕事について間違った選択をするケースが多かったということ。

スコットランドの学生は、専門を選ぶ十分な時間があったため間違いのない選択ができました。

スキル取得は遅れたものの、長期的には収入面でのマイナスもありませんでした。

 

つまり、

 

マッチ・クオリティを向上させると、スキル取得の遅れによるマイナス分を上回るということ、

マッチ・クオリティを高めるには、早期の専門特化よりも、自分について知る時間が必要ということです。

 

 

これは、特に専門学部に進学した人であれば想像できるのでないでしょうか?

わたしがまさにそうで、薬学部に入学しましたが、薬剤師をしたのはわずか2年で、今ではまったく異なる仕事をしています。

 

初志貫徹の呪縛にとらわれている人にとって、本書の第6章は自分を解放するきっかけになるかもしれません。

関心や興味が変わるのは欠点でもなく、競争上の不利でもありません。

実際に行動した経験に応じて、方向性を変えることをためらっている人は、

この章に登場する世界的に有名なある人のストーリーから大きな勇気をもらえるはずです。

 

求められるのはT型人材

といっても、

不確実性の高い時代では、専門分野をもたなくていいわけでは決してありません。

1つの分野で深い知識を持っているが、同時にレンジも広い人材」が求められることが書かれています。

 

ずばりT型人材です。

これに対し、専門に特化した人材をI型人材と表現しています。

 

T型人材の横棒が長ければ長いほど、レンジが広いことになり、

アナロジーを活用しやすくなります。

 

本書には「親切な環境」「意地悪な環境」「不親切な環境」という言葉が繰り返し登場します。

 

親切な環境とは、

既存の解決方法をピンポイントに適用できるような環境。

 

意地悪な環境・不親切な環境とは、

これまでの解決方法をそのまま当てはめられない環境。

 

親切な環境では、専門知識がたくさんあることが強みとなりますが、

意地悪な環境では、専門知識にひっぱられると、逆に障壁になってしまいます。

 

実際のデータでも、I型人材であるスペシャリストの貢献は、1985年にピークを迎えましたが、近年では減少しているようです。

その理由として、

インターネットによって情報がより入手しやすくなったので、スペシャリストが以前ほど求められなくなったためと考えられています。

 

どうやってレンジのある人間になるのか?

本書を読んでいて終始、頭にあった疑問は、

 

では、どうやって「幅」のある人間になるのか?

 

この答えは最終章にあります。

端的にひとことでまとめられています。

ここでその「ひとこと」を書いても、まったく響かないと思いますので書きません。

 

 

この本を最終章まで読み進めれば、この言葉がスムーズに頭の中に浸透し、

新しい行動のハードルをぐっと下げてくれるだけでなく、

これまで経験したことに無駄はなかったのだと思えるはずです。

 

 

ぜひ本を最後まで読んでみてください。

子供をお持ちの方でしたら、子供の教育を考えるうえで重要なヒントがたくさん得られるはずです。

わたしの場合は、親として自分に何が足りないか?考える十分すぎるきっかけになりました。

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わたしが特に足りないと感じたのは、アナロジー思考です。

この本を読んで、アナロジー思考の必要性を痛いほど感じましたが、わたしがまだできていません。

親がアナロジー思考ができなければ、子供にヒントを与えることだってできませんので、本で補っていきます。

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公開日:2020年8月2日