rRNA、mRNA、tRNAの違い・役割をわかりやすく解説【身近な例えつき】

生物学のタンパク質合成で出てくるRNAの種類に頭が混乱したことはありませんか?

rRNA、mRNA、tRNAなどいろいろなRNAが登場して、RNAとrRNAは別物なのか、包括関係にあるのかなど、混乱することがありますよね。

結論から言うと、rRNA、mRNA、tRNAはすべてRNAですRNAを機能・役割によって分類した呼び名が、rRNA、mRNA、tRNAです。

政府機関が経産省、防衛相、文科省に分けられているのと同じイメージです。

今回は混乱しやすい各RNAについて、わかりやすく解説します。

もしイメージを最初に抑えたいという方は、記事の最後からご覧ください。身近な例えで、各RNAとタンパク質合成を説明しています。

 

mRNAワクチンに関する記事はこちらから▼

【mRNA医薬】ワクチン開発を席巻する欧米ベンチャー 日本のとるべき戦略は?

mRNA医薬という新しい治療戦略-実用化の鍵を握るDDSキャリアとは?

 

rRNA、mRNA、tRNAの違い・役割をまずざっくりイメージ

DNAは重要な遺伝情報を持っていますが、RNAの力を借りなければ、遺伝情報を活用できません。

以前の記事でも触れましたが、

DNAは遺伝情報を保存するためのもの

RNAは遺伝情報を利用するためのもの

 

なんですね。

つまり、DNAの情報をアウトプットする(発現させる)のがRNAの役割です。

厳密には、RNAには情報を利用しないものがあります。

tRNA、rRNAは厳密にはノンコーディングRNAに含まれますが、ここではわかりやすく理解していただくために、大まかに説明しています。

 

mRNA、tRNA、rRNAのざっくりしたイメージをイラストにするとこんな感じです。

※後で説明しますが、mRNAとtRNAが「持つ」ものは異なります。

mRNA=メッセンジャーRNA:持つ

tRNA=トランスファーRNA:運ぶ(+識別する)

rRNA=リボソームRNA:作る

 

もう少し詳しくしたのがこちら。

出典:http://ajan.ciceros.co

rRNAと書いてあるものはリボソームでないの?という疑問については、後述します。

 

mRNAの役割

mRNAの役割は「持つ」こと。持つのは遺伝情報です。

mRNAは遺伝情報をDNAから受け取って(コピーして)、タンパク質を作る場所(リボソーム)まで移動します。DNAの遺伝情報がmRNAにコピーされることを転写といいます。

しかし、貴重な情報を持っていても、材料(アミノ酸)がなければタンパク質を合成できません。

一流シェフの秘伝レシピの情報を持っているけれど、肝心の材料がなくては料理を作れないのと同じです。

そこで、tRNAの力を借ります。

 

tRNAの役割

tRNAの役割は2つ。運ぶこと・識別することです。

運ぶのはアミノ酸です。識別するのは、届け先(mRNA)の所定の場所です。

tRNAはアミノ酸をmRNAまで運びます。

こちらの記事で、RNAは一本鎖ですが折りたたまれて分子内で塩基対を形成し、三次元構造を形成することを書きました。tRNAはその典型例で、次のような構造をしています。

出典:http://fig.cox.miami.edu/~cmallery/150/gene/tRNA.htm

 

tRNAでは、👆で分子の両端に塩基対を形成していない部分が2箇所ありますね(赤字)。この2つの部分が、タンパク質を合成するうえで非常に重要です。

その1つが、一番上にあるコドン(3つの塩基の集まり)。ここにアミノ酸が結合します。もう1つが、一番下にあるアンチコドン。この3つのヌクレオチドが、mRNAの相補的なコドンと塩基対を形成します。

mRNAの3つの塩基と逆配列の塩基を持つため、アンチコドンといいます。

tRNAは片方で正しいアミノ酸を識別し、もう片方でmRNAのコドンを識別し、アミノ酸をmRNAの所定の位置に届けます。mRNAのコドンがアミノ酸を識別するわけではないのです。

 

教科書にはさまざまなtRNAの模式図が登場します。

👇の左は、実際の全体像を示したもの。右は、tRNAのアンチコドンを強調した模式図です。

出典:http://fig.cox.miami.edu/~cmallery/150/gene/tRNA.htm

 

このようにして、アミノ酸を持ったtRNAがmRNAに沿って一列に並び、アミノ酸同士が結合してタンパク質が合成されていきます。タンパク質の合成工場となる場が、リボソームです。

出典:courses.lumenlearning.com

rRNAとリボソームの違い

まず、リボソームとrRNAについて区別しておきます。

リボソームは、rRNAとタンパク質から構成されており、リボソームの中心的な役割はrRNAが担います。タンパク質はrRNAを強化するものです。つまり、リボソームの主役はrRNAなのです。

これは教科書から抜粋したリボソームの構造です。

出典:ワトソン遺伝子の分子生物学(第6版)p476

リボソームの中心はrRNAで、タンパク質がrRNAの隙間を埋めていますね。

 

出典:alevelbiology.co.uk

リボソームは👆のように大小のサブニットより構成されます。翻訳が行われないときは、左のように離れて存在しています。

タンパク質合成のたびに、「くっつく→離れる」を繰り返しています。その流れは、

①リボソームの大小ユニットが集合する

②リボソームがmRNAと会合する

③tRNAがアミノ酸をmRNAに届け、タンパク質が合成される

④リボソームがmRNAから離れ、大小サブユニットがバラバラになる

 

出典:ワトソン遺伝子の分子生物学(第6版)p473

 

rRNAの役割

rRNAの役割は、タンパク質をつくることです。正確には、タンパク質合成を触媒することです。

リボソームにおけるrRNAの役割をもう少し詳しく見てみます。

前述の通り、リボソームは大小のサブユニットから構成されていましたね。各サブユニットには次の違いがあります。

小サブユニット:mRNAとtRNAを正しく結合させる(暗号解読センター)

大サブユニット:ペプチド結合を形成する(ぺプチジル転移酵素中心)

 

サブユニットの違いと書きましたが、実際は、リボソームの上記機能を持つ領域は、ほとんど、または完全にrRNAからできています。

このように、rRNAはリボソームの中で、mRNAとtRNAのペアが正しいかどうかを確認し、ペプチド鎖を形成しています。もし間違ったtRNAが入り込んでいたら、そのtRNAは追い出されてしまいます。

 

リボソームができないこと

興味深いのが、リボソームはtRNAとmRNAのマッチングはしっかり確認しますが、tRNAが持っているアミノ酸が正しいかどうかは確認できないことです。

つまり、リボソームはtRNAを識別するのであって、アミノ酸を識別するのではないということです。もしtRNAが間違ったアミノ酸を持っていても、それを阻止することはないのです。リボソームの優先事項は、tRNAとmRNAのマッチングが正しいかどうかを確認することなのです。

では、どのようにtRNAの持つアミノ酸が正しいかを確認するかというと、アミノアシルtRNA合成酵素が活躍します。アミノ酸の種類ごとに合成酵素が1種類あり、担当するアミノ酸をそれぞれ正しいtRNAに結合させています。この精度は非常に高く、間違ったアミノ酸を結合するtRNAは1000個に1個以下です。

その細かな仕組みはまた別の機会に譲るとして、今回お話したmRNA、tRNA、rRNAの関係。考えれば考えるほど、男女が結婚に至るまでを連想するのは私だけでしょうか?



mRNA、tRNA、rRNAの関係を身近な例で解説

ここでは一旦DNAは置いておいて、各RNAの関係性に着目しています。

ある日、男性が女性にプロポーズしました。

女性は結婚に同意。

そして、女性の両親にご挨拶。結婚の承諾をもらいます。

めでたく結婚!

 

誰が(または何が)何に該当するかイメージわきますか?

結婚を承諾された場合、されなかった場合を各RNAになぞらえたのがこちら。

 

それぞれの過程を解説すると、

男性が女性にプロポーズ:tRNAがアミノ酸をmRNAに運ぶ。指輪がアミノ酸

両親にご挨拶:両親(rRNA)が男性(tRNA)とmRNA(女性)のペアが正しいかチェック

両親が支持し、2人は結婚:タンパク質が合成される

両親が反対:リボソームからtRNAを追い出す

 

この例えだと、男性(tRNA)が女性(mRNA)にどんな指輪(アミノ酸)を用意したか、両親は関与せず、ということですね。あくまで、男性の人間性(将来性も?)と二人の相性を確認するだけ、ということです。

身分不相応であった場合は、男性(tRNA)は「おとといきやがれ」と両親に追い出されてしまうわけです。

 

この例えが参考になれば幸いです。

※アイキャッチ画像の出典:http://ajan.ciceros.co

 

【参考】

ワトソン遺伝子の分子生物学 第6版

ワトソン遺伝子の分子生物学 第6版

ジェームス.D.ワトソンほか著
Amazonの情報を掲載しています
Essential細胞生物学(原書第4版)

Essential細胞生物学(原書第4版)

Amazonの情報を掲載しています

カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第2巻 分子遺伝学 (ブルーバックス)

カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第2巻 分子遺伝学 (ブルーバックス)

デイヴィッド・サダヴァ, クレイグ.H・ヘラー, ゴードン.H・オーリアンズ, ウィリアム.K・パーヴィス, デイヴィッド.M・ヒリス
Amazonの情報を掲載しています

 

 

こちらの記事もおすすめ

1件のコメントがあります

Comments are closed.

公開日:2019年6月6日