3Dプリンタを小学校低学年から導入すべき理由
先日、文科省が中学校の教材整備指針に3Dプリンタ追加を公表しましたね。
【文科省】教材整備指針(一部改定案)に関する意見募集の結果について
今回の指針は、強制力のあるものではなく、各学校が整備指針に基づいて、任意で導入するものですが、3Dプリンタが追加されたのは初めてのことです。
しかし、中学校からではなく、小学校から3Dプリンタを導入するべきというのが私の考えです。
※本記事は3分で読めます。子どもたちの未来に関心のある方、私に3分の時間をください。
3Dプリンタを小学校低学年から導入すべき理由
認知能力を高めるために有効と思うからです。
認知能力を高めるトレーニングを紹介する本も出ていますが、3Dプリンタを使うとより良い、という結論にいたりました。
きっかけは『ケーキの切れない非行少年たち』という本です。
まだ読み途中ですが、p50まで読んだところで、衝撃を受けましたので、記事にしました。
まず、認知能力を高める必要性について、本をもとに説明します。
認知機能は社会でいきる力の土台
認知機能とは、
見る・聞く・触れる・匂う・味わうを通して外部環境から得た情報について、
①情報を整理
②整理して計画を立て、実行していく上で、
必要となる能力です。
つまり、外から入ってくる情報を正確に整理して、それをもとに計画・行動するために必要な能力。
教育、人間関係など、社会で生活していくうえで、すべてのベースとなる能力です。
『ケーキの切れない非行少年たち』の筆者はたくさんの非行少年と接した中で、少年たちに「見る力」「聞く力」が足りないことに気づきます。
「見る力」の具体例として、衝撃的なエピソードが紹介されていますので、ご紹介します。
ある非行少年に上記図形(1-1)を書きとってもらったところ、少年が描いたのはまったく異なる図形(1-2)でした。
目の前にある、図形を書きうつすことができないということです。
つまり、少年が見ている世界は、周囲の人たちが見ている世界とは違うということです。
世界がゆがんで見えているということは、正しく聞いて理解することはもっと難しいはずです。
犯行を反省する、自覚する以前の問題として、少年と周囲の大人たちが見ている世界があまりにも違ったのです。
筆者が少年たちを観察したところ、
・簡単な引き算や足し算ができない
・漢字が読めない
・簡単な図形を写せない
・短い文章を復唱できない
という共通点が見られました。
そもそも、見る力、聞く力、想像する力が弱いために、人の話を聞き間違えたり、正しく理解できなかったり、周囲の状況を読めなくて人間関係でつまずき、それがイジメの原因となり、非行につながっていたのです。
上記で紹介した図形のほか、非行少年の中には、ケーキを三等分できない少年がたくさんいたようです。
ケーキを三等分、四等分できないことは、小学校低学年や知的障害の子供にもみられることですが、凶悪な犯罪を起こした少年たちに共通してみられることに、矯正、反省させる難しさを感じます。
「見る力」「聞く力」が弱いため、自分がやったことを自覚、反省することができないのです。
学校生活についていけず困っている子、不適切な行動をしてしまう子に対しては、「見る力」「聞く力」を確認する必要がある、と筆者は考えています。
そして、「見る力」「聞く力」が弱いサインは、小学校2年生から出ているようです。
しかし、非行に走る少年たちの家庭環境は良いとはいえないことが多く、親が子どもたちの困っている気持ちに気づいてあげることはほぼ期待できません。
すると、学校など教育現場で、子どものSOSサインをキャッチする必要がありますよね。
具体的な取り組みについては、本の後半で「コグトレ」という認知機能強化トレーニングの方法が紹介されていますので、そちらをご覧ください。
紙と鉛筆で認知機能トレーニングする本もあります。
私がp50まで読んだときに思いついたのが3Dプリンタを活用する方法です。
小学校低学年から、教室に3Dプリンタを導入するのは、教育的効果だけでなく、子どもたちのSOSに気づくきっかけにもなるはずです。
冒頭でも書きましたが、文科省が中学校の教材整備指針に3Dプリンタを追加した公表しました。『ケーキの切れない非行少年たち』を読んだ今、中学校は遅すぎだと思います。
以下、認知能力を高めるために3Dプリンタを利用する方法をご紹介します。
3Dプリンタを使って認知能力を高める方法
※私が思いついた方法です。
✔使い方①
次の手順で使います。
①子どもに図形や果物などの形を写してもらう
②写したものをモデリングする
③モデリングした3Dデータをプリントする
モデリングとは、3Dデータを作ることです。ここではあまり複雑なものでないのがいいと思います。
たとえば次の図形を書き写してもらいます。
子どもはこんな風に書き写したとします。
これを3Dプリンタで印刷して、立体を子どもに手に取ってもらい、「差」を確認してもらいます。
「見る力」が弱い場合、平面では図形の違いがわかりづらいはずです。
3Dプリンタであれば、立体にできますので、「見る力」が弱いことに気づきやすくなると思います。
学校でこれを実践するのは難しいかもしれませんが、子どもにとっては大切な気づきだと思いますし、子どものSOSを見つけやすくなるはずです。
✔使い方②
たとえば、このような問題を用意します。
準備として、下記図形それぞれを3Dプリントしておきます。立体モデルは子どもには最初に見せません。
①心の中で図形を回転してもらい、正解を選んでもらいます。
②次に、あらかじめ3Dプリントした立体モデルを並べてあげて、触れながら正解を探してもらいます。
①は本でも紹介されている方法です。
「相手の立場に立ってみる練習であり、相手の気持ちを考える力に繋がる可能性がある」トレーニングです。
つまり他者理解につながるトレーニングです。
3Dプリンタを使えば、②のプロセスを追加できます。
平面でやった後に、立体で確認することで、より理解しやすくなるはずです。
2つ目の方法であれば、いろいろなパターンを一度3Dプリントしておけば、繰り返し何度も使えますので、教室での導入ハードルは低いですよね。
ほかにもいろいろ考えられますので、今後の記事でご紹介していきます。
ニュースで「人を殺してみたかった」という動機を聞くたびに、なぜ後先のことを考えられないのか、不思議でなりませんでした。
この本を読んで、非行に手を染める少年たちは認知能力が弱かったということ、つまり、少し先の未来を予測する、想像することが難しかったことがわかりました。
3Dプリンタを使えば、これまでの認知能力を高めるトレーニングをより効果的なものにできると思います。
非行に至るまでSOSに気づいてもらえない少年たちの家庭に3Dプリンタが導入されるとは思えません。
であれば、小学校低学年から教室に導入すれば、子どもたちのSOSが大人に伝わりやすくなるのでは・・・と思った次第です。
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