3Dプリンタで期待できる2つの教育メリット
私の本業は翻訳です。
主に中日翻訳、日中翻訳をしているのですが、中国語といえば漢字。
日本語にも漢字がありますよね。
中国語翻訳で陥りかねないミスとして、「漢字にひっぱられる」ことがあります。
どういうこと?と思われるかもしれませんね。
具体的に言うと、中国語の漢字と、日本語の漢字とで異なる意味を指す、あるいはより良い訳語があるにも関わらず、漢字をそのまま使ってしまうということです。
これは翻訳ではなく、入力方法の「置換」にすぎません。
中国語と日本語とで同じ漢字が同じ意味を持つことはあります。しかし、異なることも多いのです。
英日翻訳ではこのようなことは起こりえませんよね。これが中国語と英語の翻訳にある、大きな違いの1つだといえます。
このミスを犯した時、私は「思考停止状態に陥っていたな」と猛省します。
思考停止とは、まったく考えていなかった状態です。考えることなく、言葉の定義、訳出する言語での自然な使われ方、それらをスルーして、変換してしまっているだけの状態です。
忙しかったり、翻訳の分量が多かったり、繰り返し表現が続いた場合などに、時として「漢字」にひっぱられることがあります。
中国語翻訳で特に怖いなと感じていることです。
3Dプリンタで子どもにおもちゃを造形していた時、私は上記と似たある思考停止に陥りました。
そこで得た気づきについて、今回はまとめてみました。
目次
おもちゃの造形失敗による学びと気づき
我が家で1代目の3Dプリンタ(M3DのMicro+)を使って真っ先に造形を試みたのは、おもちゃの車でした。
Thingiverseからデータをダウンロードして、早速造形してみました。
元のSTLデータは上のように、車体が起き上がった状態でした。
私はこのままプリントをスタートしました。
どうなったでと思われますか?
結果は、造形失敗でした。途中で、造形ベッド上の造形物と、ノズルから押し出されたフィラメントがくっついてしまい、造形物がベッドからずれてしまいました。
ここで質問です。
Question 1
この状態で、どのような工夫ができたと思いますか?
お子さんも3Dプリンタをお使いの場合は一緒に考えてみてください。
失敗を経験し、私は次のことを(ようやく)思いつきました。
私の考え
車体を回転させて、普通の車のように配置する
石が飛んできそうですが、これに気付いた時、ちょっと感動しました。そうか、配置を変えればいいじゃないか!と。
私の頭がいかにカチコチだったかおわかりいただけると思います。
こんな感じに配置を変えてみました。
(最初の配置のままでもうまくいく方法はあるかもしれませんが)
さて、ここでもう一度質問です。
Question 2
この状態で造形したらどうなると思いますか?
何か工夫できることはあると思いますか?
3Dプリンタの使用経験のある方にはわかりきった質問でしょう。
しかし、使い始めたばかりの私は、この点に気づくまで失敗が必要でした。
思いつきましたか?
私の考え
サポート材を追加する
「当たり前だろ!」のつっこみはおいておいて・・・
今では理解不能ですが、3Dプリンタを使い始めたころ、本当に思いつかなかったのです。サポート材を追加せずに造形開始していました。3Dプリンタの原理や、サポート材が必要なことももちろん知っていたにも関わらず、です。
これは冒頭で書いた翻訳作業における「思考停止」と似ていますよね。
ただ、翻訳作業の場合、単調な翻訳が続いたり、分量が多い場合、注意していないと「思考停止」に陥りやすいという、前提条件があります(私の場合)。
一方で、3Dプリンタでの造形では、リラックスした状態であったにも関わらず、私は失敗を何度か繰り返してようやく、上記のことに気付きました。
最初は、「シンプルな家庭用3Dプリンタだから(最初に購入したMicro+のことです)造形できないものもあるのかな?」と装置に言い訳を求めていました(恐ろしい思考停止です)。
サポート材を追加した状態がこちら↓。
これならトランク部分を造形する時に、サポート材があるのでちゃんと造形できますよね。
初めての方向けに補足すると、3Dプリンタで造形する場合、すでに造形した下層が新しい層の面積より広くないと、押し出された樹脂は垂れ下がってしまいます。樹脂の垂れ下がりを防止するために、サポート材(上記写真の緑色部分)を追加して、垂れ下がりを防止する必要があります。
3DプリンタをSTEM教育に応用できないか?
私は上記失敗とそこから得た気づきによって、3Dプリンタというのは、試行錯誤を簡単に、何度でも繰り返せるツールなんだ、と考えるようになりました。
子どもにおもちゃを作ってあげたり、フィギュアを造形したり、歯車を補ったりすることもできます。しかし、それだけで終わらしてしまうのはもったいないです。
私の息子はまだ4歳で、一緒にCADをいじったりするのはまだ難しいです。それでも造形中の3Dプリンタの前に座って、ノズルを指差しながら、「ねえ、これはどういう動きをすると思う?」など質問すれば、自分なりに答えてくれます。
5歳くらいになれば、上記の画像を見て、どのように配置したり、どのようにサポート材を追加すれば造形に失敗しないか、一緒に考えられるようになると思いますし、それを楽しみにしています。
我が家では現在、Adventure 3という3Dプリンタを使用しています。上記でお見せした画像はその専用ソフト「FlashPrint」で加工したものです。このソフトには「自動サポート」以外に手動でサポート材を追加する機能もついています。
自動サポート機能でサポート材をつけて造形したのが以下の写真です。造形後にサポート材を取り除くのに苦労しました。
実際に造形して、サポート材を取り除く苦労を味わうと、今度は、
きちんと造形できて、かつ、サポート材をスムーズに取り除くにはどのようにサポート材をつければよいだろう?
と考えるきっかけになります。
サポート材は丁寧にとらないと、本体の部分まで一緒に取り除きかねません(経験済み)。
サポート材をどのように配置するか?と考えることで、
造形するオブジェクトの重心がどこにあるのか?
自重作用(オブジェクト自体の重み)によって形状が崩れないか?
など物理的思考にも役立つのではないかと思っています。
3Dプリンタで子どものころからPDCAサイクルを身に着ける
3Dプリンタでデータを用意し、データを形に変え、失敗を経験することで、
次はどうすればうまくいくだろう?という改善を繰り返すことができます。
また、実際に造形し、完成品まで至る過程で、サポート材の除去で苦労することで、
より簡単に完成品をつくるにはどうすればいいだろう?と考えるきっかけになります。
この行動・検証・改善は、PDCAサイクルだと思いませんか?
PLAN:データを用意、加工する。
DO:造形する。
CHECK:造形後の状態を検証する。
ACTION:造形後の状態が造形前の仮説と異なる場合は、改善し、新しいアクションをしてみる。造形後に問題がない場合も、より良いデータを用意できないか考えてみる。つまり、できたこととできていないこと、効果があったことと効果がなかったことを区別して、次にいかす。
データが形になるという経験を実現できる3Dプリンタを小学校に導入を進める国もあるなど、世界的にはSTEM教育への導入が日本よりも進んでいます。
これだけでなく、幼少期から3Dプリンタに触れることで、自然と自ら学び、自分の経験から学びを得て、次に生かすというPDCAを自然に回せるようになるのではないでしょうか。
これは私の思いつきですが、子どものころから3Dプリンタに触れるメリットは、STEM教育だけでなく、ビジネスにも通じるものがあるのでは・・・と思いました。
息子とCADソフトをいじれるようになる日を楽しみに、まずは母がCADの基本をマスターします。
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