【レビュー・感想】絶対学力「9歳の壁」をどう突破していくか?【生き抜く力について考えさせられる】
「絶対学力 『9歳の壁』をどう突破していくか?」を読みました。
2003年出版と20年近く前の本ですので読むか少し迷いましたが、今にも今後にも通用する本質的な内容だと思いました。
小学校から中学生までたくさんの生徒さんを見てきた経験をもとに語られているので、説得力があります。
この本を読んで私の中で迷い始めたのは、息子は公文を続けてよいだろうか?ということです。
これに関する結論も含め、印象的だったことをまとめました。
著者の主張に納得できるところ、あまり納得できないところ、とそれぞれありましたが、
子供を持つ親なら読んでおいて決して損のない本です。
私にとって、読んで良かった本になりました。
糸山先生の下記言葉が少しでも気になる方は、手に取ってみるのをおすすめします。
「頭は自らの判断基準を作るためにあるのです」
「教育とは人生を楽しむことができる力を育てることなのです」
目次
「絶対学力」著者の糸山先生の言いたいこと
いちばんのメッセージは次の内容だと感じました。
小学校低学年では反射的な計算プリントを高速でやらせることではなく、
ゆっくり、じっくり考える力をつけてあげることが大切。
幼児期にスピード重視の計算練習ばかりさせると、
脳は反射的に計算に取り組みますが、この時の脳は「考えておらず」、
考えない習慣によって、考えない頭→→→考えられない頭へと変化していくことが指摘されています。
運動せずにパソコン作業ばかりしていると、肩がカチコチになってしまい、ほぐすのに時間と労力がいるのと似ていますね。
したがって、「考えない習慣」をつけてしまう、
●反射的で
●スピードを要求する
プリントはご法度だというわけです。
本でははっきり書かれていませんが、「反射式プリント」は公文式を指すと思われます。
ちょっと補足しておくと、糸山先生はすべての反射式プリントを批判されているわけではありません。
●足して10になるたし算
●九九
この2つについては速くできる必要があるので、取り組んでOKとされています。
ここで私は考えこんでしまいました。
息子が公文に通学中だからです。
糸山先生によると、
「考える力」をつけるにはできるだけ条件反射的な反復作業をさせないことが大切。
公文はスモールステップで反復して取り組むプリントで、
まさに「考えない習慣」をつけてしまうプリントに相当します……。
私のいまの結論は次のとおり。
●公文プリントが必ずしも思考力を奪うわけではない
●取り組み方を工夫すれば、弊害ばかりではない
●かといって、公文算数がおすすめなわけではない(工夫が必要)
もし公文算数を始める前にこの本を読んでいたら、あるいは、
子供の公文に対するモチベーションが低い時にこの本を読んでいたら、「公文を辞めよう!」と思ったでしょう。
しかし、息子の最近の様子を見るかぎり、取り組み方次第では必ずしも思考力を奪わないのでは?と思っています。
低迷期もありましたが、息子は公文算数に意欲的に取り組むようになりました。
プリントに取り組む時はスピードは重視せず、わたしが横でどんな理解度でやっているか観察するようにしています。
毎回プリントが終わったあとは、算数パズルか図形パズルなど頭を使うものに取り組んでいます。
今では1日20~30分の学習習慣がつき、プリントに取り組んだ後は必ず
楽しかった!
と言います。
このような状況から、
公文算数を続けつつ、「できているけど実は分かっていない」など悪い症状に該当しないかどうか、つぶさに観察しながら継続していくことにしました。
現在は、暗算ゲームを楽しんだり、算数パズルに試行錯誤しながら楽しんでいるので、公文算数をやらせっぱなしにしなければいいと思っています。
このように思ったのは息子の変化のほかに、算数教育で著名なほかの先生方が糸山先生と違うことを書かれていたことも関係しています。
正反対とは言いませんが、ケースバイケースだよね、と思うに足りることが下記の本に書かれていますので、迷う方はこちらも読まれるのをおすすめします。
▲この本の感想はこちら⇒【公文をやめてよかった】本当に断言できる?公文式のメリット・デメリットを完全解説
「絶対学力」を読んで印象的だった3点
心に響いたポイントはいくつかありましたが、特に印象的だったのは3つ。
高速な反射的学習は考える力を奪う
これは先ほど書いたとおりです。
読み聞かせは小学3年生まで続ける
読み聞かせは5歳から9歳までがいちばん大事と書かれています。
低学年のうちは読むことに精一杯で、読んだ内容をイメージする余裕がありませんよね。
親が読み聞かせしてあげれば、自分では読むのが難しい本でも、聞いてイメージを膨らませることができます。
同じことがエルカミノの村上先生の本にも書かれていました。
読解力にもつながるので、親がお手本を示して、子供に同じ文章を何度も音読してもらうことが進められています。
小学校入学と同時に読み聞かせをやめてしまうのはとてももったいないことですね。
大量インプットよりも体験的学習を
糸山先生は、乳幼児期にカード、CD、ビデオを大量に見せることは危険だと指摘されています。
イクウェル(EQWEL)など著名な幼児教室では、フラッシュカードなどによる大量のインプットを早くから行いますよね。
その根拠には、
脳は6歳までに大人の約95%にまで成長する
脳の回路となるシナプスは1歳までに急増し、使わないと減っていく
この2つがあるわけですが、糸山先生はこれを「的外れ」だと批判されています。
神経細胞が6歳までに急激に成長するのは「複雑な言葉」を十分に習得するためなので、
この時期には大量の機械的なインプットではなく、五感を伴う体験を大切にするべきことが強調されています。
これにはなるほど!と納得でした。
たとえば、
●冷たい氷を触って、「氷」と感じることと、
●カードに書かれた氷を見て、「氷」という言葉を知ること
入ってくる情報量が全然違います。
本物の氷に触れたときのひやっとした感触
手のひらにのせておくと少し溶けだす様子
水に入れると浮かぶ氷
冷蔵庫から出したばかりの氷からでる「ゆげ」
これらのどれも、カードでは感じられないものですよね。
体験的学習では大人も気づかないほどの情報量があり、こうした情報は、
後に追加される情報と作用しあって様々な反応を築いていくと書かれています。
「点」が増えて、相互につながっていくイメージでしょうか。
つまり、大切にしたいのは、子供が心地よい体験的学習。
体験というと、外へ出かけたり、何か準備が必要に感じたりしますが、著者のいう体験的学習とは室内でできるものです。
「氷」の例のほかも、私が考えた例ですが、
●部屋の中にある「台形」を見つけよう。その中で、いちばんかっこいい台形は何だろう?
●「プラ」マークがついている製品をたくさん見つけてみよう。いちばん多く見つけた人が勝ち!
これも立派な体験的学習ですよね。
「体験」とつくと、身体を動かすようなイメージがありますが、
考えながら、感じながら学習することが体験的学習とされています。
これなら、
●スーパーで痛んでいないリンゴを取ってもらう
●じゃがいもを探してもらう
●106円のお会計に100円玉1枚と10円玉1枚を渡したらお釣りがいくらになるか横で見て考えてもらう
など、日常でできることはたくさんありますね。
考える力=生きる力である
刺さった言葉が、
思考力なければ全てなし
抽象思考がぐんと増える高学年~中学校までに、消化力となる「思考力」を十分に育てておかなければ、どんなにインプットしても成績にはつながらない、
消化力(思考力)さえ育てておけば、知識を咀嚼して吸収する速度が早くなるので、インプットが遅れても特に問題にならない
ということです。
糸山先生がおっしゃる「思考力」とは、時代が変化しても自分の判断基準で考えられる力とも言い換えることができます。
反復練習で反射的に対応できる問題ばかりやっていては、じっくり考える力がつかず、時代の変化に対応できなくなってしまうんだよ、
という強い危惧の気持ちが伝わってきました。
この本は少しでもひっかかったら読んだ方がいい
「九九以外は暗算厳禁」など、ちょっと極端では?と思うところもありますが、
全体的に糸山先生の教育への真剣さが十分伝わってくる良書でした。
巻末には、子供の「考える力チェック」「考えない習慣チェック」が細かく掲載されていますので、
これを活用して、公文算数を続けつつ、子供の状態を観察していこうと思います。
最後におすすめの糸山先生フレーズをご紹介させていただきます。
勉強は成人になるための頭の体操である
教育とは人生を楽しむことができる力を育てること
自分らしい人生を切り開いていくためのトレーニングをするのが毎日の勉強である、と理解しました。
すごく響いた言葉でした(響いた言葉が多いですね💦)
▼わたしが読んだもの
▼ほかにも出版されています(これから読むなら新しいものがよいかも?)
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