【感想ブログ】『名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと』【レビュー】

 

子どもの中学受験の準備として、

どんな中学校があるのか調べることにしました。

 

最初に読んだのがこの本。

タイトルにある「東大合格より大事なこと」に運命的なものを感じて即購入。

名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと (集英社新書)

名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと (集英社新書)

おおたとしまさ
836円(11/21 16:08時点)
Amazonの情報を掲載しています

自分もこんな環境で学びたかった……という羨ましさから涙ぐみながら読みました。

 

学校を選ぶのは子供ですが、

この学校に行ってほしい!!

と心底思いました。

 

ひとことで言うと、

受験ではなく、「人生」に役立つ勉強をしてくれる学校です。

世間が重視するような「成果を求めない」学校とも言えます。

そして、先生方が実に楽しそう。

 

ですので、

うちの子は絶対東大に行ってほしい!

佐藤ママにあこがれる!

開成合格のためにうちは小1からサピックス!

という方には合わないと思います。

 

想像もしない教育環境を発見したというか、

教育の「桃源郷」を見つけたような気持ちでした。

名門校・武蔵とは?

武蔵は開成、麻布と並ぶ御三家の1つです。

「武蔵」という学校があること、武蔵が御三家の1つであることを、この本を読むまで知りませんでした。

 

武蔵自身は自らを御三家の1つとは認識していません。あくまで、学習塾側が分類したものです。

この本を読むと、東大合格者が減っても武蔵は気にしないであろうことがわかります。

重要なのはどの大学に行くかではなく、中高6年間をどう過ごすのか。

人生で大切な中学・高校の6年間を、大学受験対策のために使うのはもったいない!

という内なる声・匂いがプンプンしてきます。

 

世間体なんぞ、なんのその。

「空気をまったく読まない」姿勢を学校が自ら生徒に示しているのです。

東京都練馬区にあり、正式名称は「武蔵高等学校中学校」。

自ら調べ、自ら考える」を理念としています。

 

この言葉はほかでも見かけますが、この本を読むと、武蔵は「自ら調べ、自ら考える」を骨の髄まで追及していることがわかります。

過去の偉人の発見を「追体験」する物理の授業

物理で学ぶ「摩擦力」。

通常であれば、教科書の基礎知識を学んだあとに実験を行います。

しかし、武蔵は生徒に事前に教科書を見たり、予習したりを禁止。

摩擦力とは何か?について、実験を通じて生徒に「発見」させます

 

教科書を見れば簡単に「手に入る」知識ではなく、知識に至るまでのプロセスをとことん経験することを重視しています。

この作業を通じて、「答えのない問い」を立てるトレーニングをし、科学的な思考法を身に着けることを重視しているのです。

生徒にとっては、常にモヤモヤがある感じ。そのモヤモヤこそが、武蔵の教師から生徒への「愛のある贈り物」なのです。

「結論ありきの実験ではなく、実験の結果から何がわかるのかを繰り返し考えさせます。調べ方と考え方を教えるということです。その基礎ができていれば、対象が変わっても応用できます」(p201)

「何を成し遂げたのか」ではなく「どうやって成し遂げたのか」

武蔵の教育は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の真逆の印象を受けます。

 

SSHとは、文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度のことで、2020年時点で全国に217校あります。選ばれた学校は研究資金をもらえます。

 

難関校では、筑駒がSSHに指定されていますね。

 

SSHに選ばれると、最先端の実験のやり方を教えますが、その分、成果を出すことが求められます。

武蔵の場合、生徒がどんな成果を出したかよりも、「どうやって」成し遂げたのか、プロセスに重きを置いています。その姿勢は、書籍に登場するいろいろな先生の言葉から感じられました。

「武蔵にいる間にどれだけの謎かけをしてあげられるのかが私たち教員の責任だと思います」(p66)

武蔵の校風は入試問題に表れている

中学入試問題に学校の校風が表れているといいますよね。

武蔵もしかり。

 

中学入試・理科の大問三では、問題用紙とともに「おみやげ」がついてきます。

たとえば、2017年度は2本の異なるネジ。

2本のネジの違いを図と文章で説明します。

問題文は下記の通り。

袋の中に、形の違う2種類のネジが1本ずつ入っています。それぞれのネジについて、違いがわかるように図をかき、その違いを文章で説明しなさい。

ただし、文字や印、傷などは考えないことにします(試験が終わったら、ネジは袋に入れて持ち帰りなさい)。

 

理科の大問三は「おみやげ問題」とも言われており、次の特徴があります。

 

予備知識はほぼ不要。

入試のその場で、先入観をもたずに本物を観察し、「情報を正確に伝える」こと。

 

つまり、おみやげ問題を見て、自分で考察し、考えることを億劫に感じる子、楽しいと感じない子は向いていないということです。

「(武蔵の実験は)薬品を混ぜると色が変わるとか、爆発するとか、マジックショーみたいな実験ではありません。

泥臭い作業をくり返し、地道にデータを積み上げます。しんどいのですが、それが科学や学問の礎です。それに耐えられる素養を入試では見極めます」(p52)

答えは何ですか?と聞く子には向かない

以上は武蔵らしさを象徴するごく一部の事例ですが、共通するメッセージは、

「答えは何ですか?」とすぐに答えを知りたがる子には向いていないのがわかりますよね。

 

中1の地理を担当する先生は、校内できのこを探したり、『ユートピア』『谷中村滅亡史』の原文をまるごと読んだり、一次データを自分で調べて考察したレポートを書かせたり。

地理で想定される範疇を超えた授業を展開されます。

社会科は暗記教科と言われますが、わかりきった事実だけを扱うのではなく、

ノイズがたっぷり含まれた体験をさせて、その中からエッセンス、理論を探し出すことを重視されています。

 

今はすぐに成果、結果を出すことが良しとされがちな風潮がありますよね。

もし、親がそのような価値観であれば、子どもも自然にそうなると思います。

これに対し、武蔵の教育は、今すぐには役立たないし、もやもやが残るけれど、数えきれないほどの「フック」を増やす教育なんですよね。

武蔵がつらぬく、「わざと失敗させる」「一見無駄な遠回りをたくさんさせる」教育は素晴らしいと思いました。

一読して脳裏に焼き付いた卒業生の答辞のことば

この本には印象的な部分があまりに多かったのですが、

その1つが、高校卒業生の答辞のことばです。

 

人の話を一読して、その内容・ストーリーの流れが頭に残ることってなかなかないですよね。

でもこの卒業生の答辞の言葉は、1回読んだだけで、頭に焼き付きました

この答辞に、武蔵の教え、メッセージが凝縮されています。

 

この記事では武蔵の良さを伝えきれないので、興味のある方は本を読んでみてください。

親御さんによっては、価値観が変わるかもしれません。

名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと (集英社新書)

名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと (集英社新書)

おおたとしまさ
836円(11/21 16:08時点)
Amazonの情報を掲載しています

 

学校を選ぶのは子供なのに、親がここまで前のめりに学校に惚れるとはどういうこと!?と思いますが、本当に惚れてしまいました。。。

息子はまだ小1ですので、学校選びはまだまだ先のこと。

でも一度、キャンパスへ見学へ行ってみたいなあと思いました。

教育の桃源郷、楽園が東京にあることを知って、感激したひとりの母親のつぶやきでした。

 

こちらの記事もおすすめ

公開日:2021年9月4日