勉強ができないのは子供のせい?子供を勉強嫌いにさせない秘訣は褒め方にある【教師の勝算より】
子供に勉強を教えているとき大声で怒鳴ったり、何度説明してもわからないとイライラしたりしてしまう。
こんなコメントを見かけました。数年後、私も似た悩みを抱えていそうで、他人事ではありません。
子供が勉強が苦手だったり、勉強嫌いになることは、親にとって悩ましい問題ですよね。
「勉強しなさい」「宿題やりなさい」と声をかけるのが良くないことは、誰だってわかっています。
では、親は子供にどう接すればいいのか?
この本にヒントがあると思い、読んでみました。
いくつか取りあげたいテーマの中で、今回は「褒め方」「子供をやる気をさせる」ヒントをご紹介します。
大切なポイントは、
子供が自分の努力次第で知能を伸ばせることを、子供本人に理解してもらうことです。
つまり、子供のマインドセットです。
マインドセットを成功させる秘訣が、子供の褒め方、つまり親や教師にあります。
目次
子供を勉強嫌いにさせない秘訣は「褒め方」にある
本から得たヒントを先にネタバレしますと、
親がよかれと思って発する褒め言葉が、
子供に「努力すればできる」と思うきっかけを奪っている可能性があります。
具体的には、問題を解けた子どもに対する、
などの褒め言葉です。
わたしも無意識に言っていました。
なぜ、これらの言葉がNGなのか見ていく前に、知能は環境によって変わることを示したフリン効果について簡単に触れておきます。
知能は環境によって変わる
昔は、知能はほとんど遺伝で決まると言われていました。
知能は環境によって変わることを示したのがフリン効果です。
50年代から80年代までの30年間で、IQスコアが上昇したことから、知能は遺伝よりも環境によって決まると言われています。
最初にこれを説明した人の名前をとってフリン効果と呼ばれています。
※近年はフリン効果に異論を唱える説も出ており、上記グラフはIQが低下していることに関する論文から引用しました。本記事ではこのテーマは論じません。
子供の知能を伸ばす方法
フリン効果のグラフは、知能を高められることを示しています。
本によると、親・教師が子供にやるべきことのファーストステップは、
子供に知能を高められることを納得させることです。冒頭で書いたマインドセットですね。
根拠として、子供を「どうほめるか」に関する興味深い研究が紹介されています。
ある問題に取り組んでもらった後、子供たちを2つに分け、各グループを次のようにほめました。
「この問題が解けたんだね、賢いね」
「この問題が解けたんだね、がんばったね」
その後、子供たちに個別にヒアリングを行い、どのように解釈したか確認しました。
正しいほめ方は次のとおりです。
(×)「この問題が解けたんだね、賢いね」
(〇)「この問題が解けたんだね、がんばったね」
✔(×)「この問題が解けたんだね、賢いね」
→「賢いね」「頭いいね」とほめられた子供は、知能を不変のものとしてとらえる傾向が強いことがわかりました。
「賢いね」と言われると、「自分に能力があったから解けた」「問題を解けたのは努力したからではない」「間違えるのは頭が悪いことだ」と子供は解釈してしまいます。
✔(〇)「この問題が解けたんだね、がんばったね」
→「がんばったね」とほめられた子供は、知能は変えられると考える傾向が強いことがわかりました。
「がんばったね」と言われると、「努力したから解けた」「もっとがんばろう」と子どもは解釈します。
つまり、努力の過程をほめてあげると、子供は「もっとがんばろう」と思い、やる気のスイッチが入りやすくなるわけですね。
能力ではなく努力の「過程」をほめる
繰り返しですが、ポイントは、
能力ではなく、「過程」「努力」をほめること。
能力よりも過程をほめると、知能は自分でコントロールできるという暗黙のメッセージを子どもに送ることができる。特に子どもが小学校の高学年くらいであれば、そのメッセージを明確にしない手はない。(引用 p323)
努力の「過程」が大切なことをわかってもらう具体例として、次の方法が紹介されています。
・科学者、発明者など偉人が出した功績の裏に、どれだけの努力があったのかを子どもに伝える
・成績の良い子はみんな努力していることを伝える
子供に伝記を読んであげるのもよさそうですね。
頭の良さは生まれつきではなく、自分の努力次第で変えられるのだ、と子どもが思えるように、教師や親がうまくガイドしてあげる必要があるのですね。
子供に失敗させる
次にやるべきことは、子供に失敗させること。
知能を高めるためには、少し背伸びして難しい問題にも挑戦しなければなりません。つまり、コンフォートゾーンを抜け出す必要があるということ。
すると、失敗する可能性が高くなりますよね。
だからこそ、失敗を恐れないように子供をガイドしてあげる必要があります。
先ほどの例だと、
「賢いね」「頭いいね」と普段からほめていると、「次も同じ結果を出さなければ」と失敗が怖くなってしまいますね。
失敗を恐れない考え方を身に着けてもらうためにも、正しい褒め方が大事なのがわかります。
さらに重要なこととして、親も挑戦する姿を子どもに見せるべき、と書かれています。
大きなことでなくても、親が日頃から机に向かって勉強している姿を見せることも大切だと思いました。
「親が勉強している(=努力している)」姿勢を見ている子だったら、勉強する(=努力する)ことが自然になりそうですよね。
子供に失敗を学ばせるツール
子供が遊びの中で失敗を体験できる1つに、3Dプリンタがありました(我が家には数台あるので、真っ先にこれを思いつきました)。
●うまく3Dデータが出来たと思って、プリントしたら想定外の失敗をする
●そもそも3Dデータに問題があってプリントに失敗する
●装置トラブルで失敗する
毎回のように失敗できるツールです。
(大きなことであれ小さなことであれ)何かを達成するには失敗はつきものだ、と子どもに思ってもらう方法としては、3Dプリンタのほかにプログラミングもありますね。
【要注意】「とりあえず」褒めるのは逆効果
「知能は高められる」「努力すればできる」と子どもに思ってもらうために、もう1つ必要なこととして、子供に信頼していることを示すことだとされています。
例えば、作文嫌いでいつも宿題をやらなかった子供が、初めて提出した場合。
子供は自分では出来がよくないことはわかっており、とりあえず書き上げた状態です。
教師(または親)側もそれがわかっているとき、「よく書けたね」とほめるのはNGなのだそう。
子供自身が作文はうまくかけていないと認識しているので、「よく書けたね」ということは、「あなたにしてはよく書けたね」「あなたにしては、まあ頑張ったんじゃない」という逆のメッセージとなって伝わってしまうからです。
つまり、自分の能力はもともと過小評価されていて、期待もされていなかったのだ、というメッセージが伝わることになります。
このやりとり、親-子供、教師-子供に限らず、友人や同僚など大人同士の会話でもありえませんか?
ちょっと個人的なことになりますが、
私は口頭でもメールでもお世辞を言うのが苦手です。
なぜだか理由がわかりませんでしたが、この本を読んで、心から褒めていない、心から発せられたのではない言葉を投げかけられるせつなさを味わったからではないかと思いました。
話がそれましたが、
子供がとりあえず宿題を終わらせた場合、親・教師の対応として、次の方法が推奨されています。
●終わらせたことを褒める
●良かった部分を褒めるとともに、改善が必要な部分を指摘する
●改善方法を一緒に考える
自分の何気ないひとことが、子供の大切な芽をつぶしてしまいかねないことに焦りました。
再読しないと自分の中に落とし込めないほどたくさんのヒントがありましたので、また改めてご紹介します。
教師だけでなく、親の必読本でした。
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