幼児期の先取り学習は必要なの?教育本と実体験からの考察
幼児期の先取り学習は必要なのでしょうか?
息子(小1)の年中からの学習状況と、御三家の先生方をインタビューした本を読んでの結論は、
- 1学期分の先取りで十分
- それ以上の先取りは子供が意欲的な場合のみ考える
- 知識の先取りよりも感性を磨く実体験こそ重要
▼御三家の先生方をインタビューした本とはこれです▼
この本の中で、開成、麻布、武蔵、灘など名門校の先生方が、先取りに否定的なことがとても印象的でした。
異なる先生方が口をそろえて、
幼児期こそ知識よりも感性、実体験が大切だとおっしゃっています。
読めば読むほど、あとから身につけられることは後でいい。それよりも、夢中になる体験、実体験を大切にしたいと思いました。
上記は男の子を持つ親向けの本ですが、女の子でも同様です。
他の子に差をつけられないように、先取りしなくちゃ!
と焦っていた方は、名門校の先生方が先取りに否定的なことを知ると、少し立ち止まってみる気になりませんか?
他のご家庭と比較して焦るよりも、名門校の先生のアドバイスを聞いてみるのがいいかもしれません。
目次
名門校の先生が先取りに警笛、幼児期で大切にするべきこと
本から一部抜粋して、幼児期で大切にすることをまとめました。
ヘッドスタートよりも熱中経験を
幼いうちに少しでもリードしておこうと思うのだろうけど、幼児のころに多少他人より先に進んでいても、そのうちその差は消滅する。
大人になって役立つスキルを早く身に付けることよりも、何かに夢中になる感覚を経験することの意味が大きいと思う(武蔵の先生)
これと同じことが、ベストセラーになった『Range 知識の幅が武器になる』にも書かれていました。
先取り派の親御さんには耳が痛いかもしれないけど、読んでおいた方がいいと思う本です。
赤ちゃん時代を振り返れば、いつ歩けるようになったかはあまり重要ではないですよね?
(「そのとき」は心配になりますが)
文字・算数など決まったやり方を繰り返すことで習得できるスキルは閉じられたスキル。こうしたヘッドスタートは一時的には優位性を感じられても、いずれ「差」がなくなることが研究でわかっています。
それよりも、ある対象に熱中し、いつまでも図鑑を眺め続けるなど熱中体験で得られるものは、その子の興味、胆力、感性、自信の土台となります。
息子でも熱中経験が何度かありました。
国旗にはまったときは、世界の国旗を覚え、図鑑を読み比べ、国旗の変遷から植民地時代の国同士の支配・被支配の関係を読み解いたりしました。
熱中・没頭経験が生み出すのは単なる知識にとどまらないことを痛感しました。
実体験こそ大切に
実体験をいっぱいさせてほしい。バーチャルじゃなく。それは親しかできないから。
小さいときから字を覚えるとか、計算ができるとか、どうでもいい。ある程度体験していると、そこから類推できる。
知識からの類推は、大きさとか肌触りとかたぶんわからないと思う。空間的広がり、時間の流れ、におい、変化とか、実体験を伴わないとなかなか身につかない。(灘の先生/太字は私)
実体験といっても大それたことではなく、木の幹を触ってみるとか、土の上で裸足で歩くとか、スーパーで野菜や魚を見るとか、動物園へ行くとか、日常ですぐにできることを勧められています。
知識から類推はできても、イメージした先には温度感とか広がりとか、感覚が伴わないですよね。
朝には青色だったアサガオが夕方には紫色に変わるとか、ボールを壁にあてたら異なる方角に跳ね返るとか、
五感をフルに使った体験による吸収力が幼児期は半端ないということです。
30歳にとっての1年は人生の1/30ですけど、4歳の子供にとっての1年は人生の1/4。
こうやって比較すると、おどろきませんか?
ひとつひとつの体験の重み、インパクトが幼児期と成人では違います。
スポンジのように吸収する幼児期に、あなたはひらがなドリルを優先させますか?
それとも、散歩中に立ち止まって花を一緒に眺める瞬間を大切にしますか?
実体験うんぬんより子供には医者になってほしい!という親へのアドバイスでも、医師になることに実体験が不可欠な理由が書かれていました。
「体験していると類推できる」にからめてお話すると、
最近の息子(小1)は、ぬいぐるみの頭位、胴囲、身長を巻き尺で測り、記録することに夢中です。
計測ついでに「2㎝」だけでなく、「2.5㎝」や「2.5か2.6か判断に迷う時は2.55」「1㎝は10㎜」など、小数点や単位を教えたら、あっさり吸収して、新たな知識をもとにさらに張り切って計測していました。
たぶんこれも、体験の延長での学び、好きゆえの学びなのだと思います。
「わかる」・「できた」が算数好きになるスタートライン
文字を書ける、計算ができるなど、こういう勉強をやらせなくても大丈夫なの?という質問に対し、「好きになれば子供はぐんぐん伸びる」と回答されています(武蔵の先生)。
他の子との比較、点数よりも、「わかる」「できた」という気持ちになり、算数を好きになってくれたら後は早いとのこと。
名門校先生方のアドバイス:幼児期で先取りよりも大切にするべきことまとめ
上記をまとめると、
- 先取りよりも熱中体験
- 実体験こそが広がり・深みのある理解となる
- 好きの気持ちがスタートライン
もっともなご意見だけど、良い大学に行くためには先取りしないわけにはいかない!というご意見もあると思います。
エリートになるには学歴が必要?高学歴なら安泰?いやいやちょっと待った!
小さい子をお持ちの方の中には、
大手企業に就職してほしい、弁護士・医師になってほしい、そのためには先取り・早期教育が必要なの!という声もあると思います。
もし本心からそう思っているのであれば、ちょっとまずいと思います。
確かに名門校を目指すのは悪いことではありません。
刺激的な仲間・友人との出会いもありますし、情熱のある先生に出会える可能性が公立より高いからです。
でもよい学校を目指した先のゴールを、大手企業、弁護士・医師などの難関資格合格だとするなら、わたしはまずいと思います。
弁護士、医師で稼ぐのは厳しくなる
佐藤優さんは、弁護士、医師は貧困ビジネスになるとはっきりと言っています。
統計データ、識者の意見、そして知人の話からも同感です。
現に『弁護士白書2015年版』には、回答者3128人中666人と約5人に1人が「年間所得200万円以上500万円未満」と回答しています。14人に1人は「年間所得額200万円未満」、40人に1人は「0円以下」という回答結果になっています。
医師の所得状況を調査したエムスリーが、35歳と50歳以上の年収を比較したところ、35歳以下では年収1,000〜1,500万円が最も多く、50歳以上では年収1,500〜2,000万円が最も多くなっています。
十分高いとは思えません。
上記は勤務医、開業医をあわせた数字ですが、医師は拘束時間が長く、在宅で仕事するフリーランス、企業と比べ、生活の自由度が高くありません。
画像診断医などAI技術進歩の影響を受ける医師も一定数おり、昔のように安泰な職業ではありません。
大手企業に就職すればまだ安心?
2年前にトヨタが「終身雇用の継続は難しい」発言をしましたよね。
富士通、コカ・コーラ、アステラス製薬など大手企業が早期退職の募集を公表し、大企業に就職=人生安泰の式が成り立たなくなりました。
もちろん、大手企業=オワコンなのではなく、「大手企業に入社すればOKではない。勉強し続けることが必要」ということです。
世間的なエリート街道に乗るために先取りをせっせとやるコスパって、あまりよくない…むしろ、勉強のために犠牲にすることも多いのではないか、と下記本を読んでからも強く感じます。
ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体 (幻冬舎新書)
近年、コロナを始め、社会に変化が生じるスピードが加速していますよね。各技術の進歩を考えると、この変化の速度は今後さらに増していくでしょう。
わたしは仕事でニュースメディアを運営していますが、海外では課題解決型のスタートアップ企業が急速に登場しています。
問題=大きなビジネスチャンスととらえたスタートアップ企業が特に、イスラエル、アメリカを中心に登場しています。東大卒や医者になるなど高学歴路線の勉強を強いられていたら、なかなかイノベーション志向をはぐくむことが難しいのではないかと危惧しています。
話を戻すと、大企業も「正解」がわからず、模索する時代です。携帯会社がiPhoneに市場を持っていかれたように、トヨタなど日本を代表する大企業がこの先も安心だとはとても思えません。
だからこそ、指標では測れない興味、関心、好奇心、熱中体験などで知識の幅を広げる実体験を大切にする方が急がば回れで、結局のところ最短だと私は思います。
これが名門校の先生方が口をそろえておっしゃる、
✅閉じられたスキルに意識を集中せず、実体験を大切にする
なのではないでしょうか。
幼児期の先取りは1学年分で十分だった
息子の体験ベースで感じた先取りの必要性について感じたことは、
1学年分で十分でした。
息子の学区は7割が中学受験すると言われる、教育に熱心なエリアです。ですが、1年生1学期の勉強はとてもゆっくり。ひらがなの書き順、書き方も、非常に丁寧に進んでいきました。
名前が読める・書ける程度までやっておけば十分でした。算数は数を数えられる、簡単な足し算レベルで十分でした。
(学校によって異なると思います)。
入学までの息子の家庭学習
国語:ひらがな、カタカナの読み書きを完了。
算数:公文で3桁+3桁、3桁-3桁のたし算・ひき算まで完了。
算数は息子の要望で、年中冬から公文をスタートしました。
国語は、年中時に幼児教室に1年通いその後退会。年長からは息子が気に入った通信教育を2つやりました(Z会とこどもちゃれんじ)。年長の秋に国旗にはまり、自分からカタカナを勉強しました(ドリルは私が自作)。
しかし、入学時には、一度覚えたひらがな・カタカナを書けないほどに忘れていました。
わたし自身、先取り推進派ではなかったので、子供に選択肢を提示しつつ、あとは子どもの自主性に任せ、サポートする程度でした。
このように、入学1年前からひらがな・カタカナをやっていても、定期的にやっていなければ子供は忘れてしまいます。
宿題がでますので、入学の1、2年前からひらがなを書いてきたお子さんにとっては退屈になるでしょう。
クラスにも算数・国語・英語を先取りしている友達がいますが、「退屈だから学校行きたくない」と4月の時点で言っていました。
息子は国語は楽しく、算数はつまらないと言っています。
先取りする場合は、学校の授業で退屈になることを想定しておく必要があります。
通信教育教材で先取りするならどれがおすすめ?
幼児期に実体験が非常に重要なことに私が気づいたのは息子が年長になってからでした。
この遅さに、ものすごく後悔しました。
入学後に振りかえっても、ひらがなやたし算といった「閉じられたスキル」は、簡単に後から追い付くことができます。
でも、体験、特に何かに没頭する体験のためのゆとり、時間があるのは、入学前です。
年少、年中時にもっといろいろな体験をさせてあげたかった!とすごく後悔しました。
もし通信教材で先取りするなら、幼児教材で唯一、実体験を重視しているZ会がおすすめです。
息子は体験教材「ぺあぜっと」を今でもやりたいそうです(笑)
親目線では、中学受験する場合も想定した、体験と学びがリンクしたうなる構成になっていました。
一見するとハイレベルに見えませんが、しっかり研究された、王道教材だと思います。
教材の片づけの手間をなくすために、タブレット教材がいい方にはスマイルゼミがいいと思います。
年中・年長のコースがあり、特に年長の場合、秋以降にはじめても、入学までに習得しておいた方がいいことを完了できるようにAIが出題問題を調整してくれます。
これまであまり机に向かう習慣がなかったお子さんにはこどもちゃれんじが無難かもしれません。
しまじろうがかわいいので、子供が自然と取り組んでくれます。息子も喜んで取り組んでいました。
この記事は、先取り学習に熱心な記事を読んで、行き過ぎた先取りに疑問を思って書きました。
小さいときの学力の「差」なんて小さいです。ちっぽけです。
学習の進捗に一喜一憂するのではなく、もっと大きな種を子供の中に播いてあげたい。わたしはそう思います。
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