子どもの考える力・思考力を伸ばすために今日からできる魔法の問いかけ【鈴木有紀さんの『教えない授業』レビュー】

 

正解のない問いに挑む力をどう育めばいいのか?

子どもの考える力・思考力を伸ばすには一体どうすればいいのか?

 

教育事情が大きく変化する時代において、この問題は多くのお父さん・お母さんの関心毎であり、頭の痛い問題でもあると思います。

ここ数年、大学入試問題でも次のような正解のない問題が増えています

出典:東洋経済オンライン (2015年度順天堂大学医学部入学試験の小論文問題)

 

教育のゴールは、有名大学に進学することではなく、変化の激しい時代に対応する力をつけてあげることだと私は思っています。

では、子どもの考える力をどうやって育めば...?

 

これこそが根本的な解決方法だ!と思えるヒントが『教えない授業 美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方』にありました。

衝撃の1冊でした。

教えない授業――美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方

教えない授業――美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方

鈴木有紀
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あゆみ
あゆみ
家庭で地道に取り組んでいけば、「自分の頭で考えるのは楽しい」と思える子を育てられる!と心の底から思えた本です。

 

本で紹介されている、「どこからそう思う?」をコアとする対話型鑑賞を取り入れたところ、

●勉強が苦手だった子がどんどん手を挙げるようになった

●子どもたちが人の話をよく聞けるようになった

●子どもたちが以前より自分の頭で考えている印象を受ける

この年齢の子どもがこれだけ論理的に話せることに驚いた

という声が増えた事例が紹介されています。

 

しかし、本の表紙にある「美術館発」に、えっ?と思う方もいるのではないでしょうか?

  • なんで美術館発なの?
  • 美術に興味ないから、読みにくいな

 

そう思う方もいると思いますが、自信をもってお伝えします

この本は美術館に限りません。むしろ、超本質的な教育本です。

読んだその日から、子どもに対する関わり方が変わります。

 

◆この本を強くおすすめしたい方◆

幼児~高校生のお子さんがいる方

暗記で受験を乗り切ってきた親御さん

時代の変化に対応できる子どもを育てたい方

学校教育に不安があり、家庭でできることをがんばりたい方

●就学前のお子さんがいて、流行りの「先取り学習」に疑問を持っている方

 

『教えない授業』には、学校で対話型鑑賞を実践した事例・エピソードが中心に紹介されていますが、保護者必見の本でもあると断言します。

対話型鑑賞はVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジーズ)とも呼ばれ、作品をグループでみて、対話を通じて作品を味わう手法です。

美術鑑賞の手法として生まれたものですが、他教科・他分野への応用が可能で、わたしも読んでいてその可能性に身震いしたほどです。

 

この記事は3分で読めます。

最後まで読むと、子どもの考える力・思考力を鍛えるために今日からできるヒントがわかりますので、ぜひ参考にしてください。

 

子どもの考える力・思考力を鍛えるために今日からできる魔法の問いかけ

やり方はとってもシンプル。

対話型鑑賞では先生は教えません

その代わりに、質問をします。

質問といっても、答えがわかっていることを問うものではなく、

✅これは何だと思う?

✅どのように見える?

 

など、子どもの考え・見方を引き出す質問を投げかけます。

 

もっとも基本的な問い「どこからそう思う?」です。

 

たとえば、このような作品をまず観察します。

フォリー・ベルジェールのバー(マネの作品)

 

この作品を見て感想を言ってください、と言われても「えっと・・・」と戸惑ってしまう人は多いのではないでしょうか?

対話型鑑賞では、答えるハードルをはじめにがくっと下げます

次のような「問い」から始まります。

【はじめの問い

絵を見て、気づいたこと考えたこと疑問でもなんでもいいので話してみましょう。

これならハードルが下がりますよね?

 

女性はなんだか悲しそう。目が遠くをみている感じ。

鏡にたくさんの人が映っているし、ワインボトルもたくさんあるから、ここはレストランかな?

 

上記はわたしが「考えたこと」です。

「感想を言ってください」と言われると、「かっこいいこと言いたいな」と逆に思いつきにくいことですが、気づいたことでも何でもいいからと言われれば、いくらでも思いつきます。

 

このように、問いに対する心のハードルが格段に下がるのが対話型鑑賞の1つの特徴です。

子どもだったら、気づいたことを我先にと、こぞって手を挙げるかもしれません。

 

1つ目の「問い」で気づきをアウトプットしてもらった後、もう1つの「問い」をします。

【2つ目の問い

「どこからそう思う?」

 

これが自分で考える力を育むうえでとても大切な質問です。

 

ここで、「どうしてそう思うの?」と聞かないのはなぜ?と疑問に思う方もいるでしょう。

あゆみ
あゆみ
わたしも、本の帯を見て「どこからそう思う?」の「どこから」に違和感を覚えました。

 

この問いのポイントは「どこから」にあります。

「どうして」ではいけません。

「どこから」と聞かれる方が、作品の具体的なところに自分が感じた根拠を探しやすいからです。

そうすることで、他者と自分が感じた根拠を共有しやすくなります。

さらに、具体的な根拠を示す習慣づけになるので、論理的思考のトレーニングにもなるのです。

 

このように、対話型鑑賞では、

  • みる
  • 考える
  • 話す
  • 聴く

の4つを繰り返して、考えや視点をみんなで共有しながら、考えを深めていきます。

 

すごくシンプルですよね?

シンプルなのに、大学生に限らず、小学1年生でも10回の授業で大きな変化が見られたことが報告されています。

しかも、自分が考える習慣づけができるほかに、意外な効果があることがわかりました。

 

対話型鑑賞が小学1年生にもたらした意外な効果

伊予市の小学校で実施した10回の対話型鑑賞の授業では、小学1年生が自分で問いをたて、考えるという変化が見られました。

おどろいたことに、

「みる」だけでなく、人の意見を「聴くこと」が楽しくなったという思わぬ効果も得られました。

 

あゆみ
あゆみ

人の話を聴くことは大切なことですが、一朝一夕ではできませんよね。

 

「人の話を最後まで聴きなさい!」と伝えることなく、生徒が自然と「友達の意見を聴くのが楽しい」となったなんて驚きですよね。

 

1回目と10回目の終わりに、生徒に同じ作品をみて感想を自由に書いてもらったところ、

✅10分たっても書き終わらない子がいる

✅文章量が増えた

自分が感じたことに理由を添えて説明できるようになっていた

という目覚ましい変化が見られています。

 

10回の授業のあとに、

みる / 考える / 話す / 聴く

 

のどれが楽しかったか、理由もあわせて聞いたところ、

1位:みる

2位:聴く

という結果でした。

 

「人の意見を聴くことが楽しい」。

これは、実施前には想定していなかった効果のようです。

 

「どこからそう思う?」の4つの効果

対話型鑑賞のいちばんの基本となる問い「どこからそう思う?」

「どこからそう思う」には次の効果があります。

さらに作品をみることを促す効果

「どこから」と聞かれることで、自分がそう感じた根拠を作品に探そうと、視線を作品に戻して、改めて考えます。

 

考えを引き出す効果

自分の考えを言葉にするのが苦手な人でも、「どこから」は「どうして」より具体的で答えやすく、自分の考えを言語化しやすくなります。

「どこから」の問いによってアウトプットしやすくなり、言葉を発することで、さらに気づきがうまれやすくなります。

 

③論理的思考を促す効果

「どうして」だと具体的な箇所を探す前に「なんとなくそう思った」と考えることを放棄してしまう恐れがあります。

「どこから」であれば、具体的なところを示せばよいですよね。この繰り返しで「~~だから~~~だと思う」という論理的思考を自然と促します。

 

④話を共有しやすくなる効果

具体的な箇所を伝えることで、ほかの人が作品の中に根拠の箇所を見つけやすくなり、理解が進みます。

 

あゆみ
あゆみ
上記4つの効果は、コミュニケーション力、説明する力、論理的思考力、観察する力など、いずれも社会で活躍するために役立つ力ですよね。

 

本には、実際の授業での会話が書き起こしで紹介されています。

わたしもこんな授業を受けたかった!と思うほどわくわくするものでした。

 

対話型鑑賞ではナビゲーターと呼ばれる人が対話を進めるお手伝いをします。

生徒の学びを引き出すナビゲーターには経験、準備、失敗が欠かせません。

保護者が家庭で実践するうえで参考になる具体的な問いかけ方・進め方が失敗事例とともに紹介されていますので、

自分で考える力をつけてほしい

 

と願っている方は、読んだその日からできるアドバイスをたくさん得られますよ。

 

「主体的に考える力」が求められる流れは止まらない

2020年のコロナウイルス問題しかり、現代は変化のスピードが以前よりもさらに速くなっていますよね。

AIの登場と激しい変化が避けられない時代で、

わたしたちは、与えられた課題に取り組むスタイルから、「答えがないからこそ考える」このような姿勢が求められていると思います。

 

冒頭で書いたとおり、昨今の大学入試問題もこの流れが止まらないことを物語っています。

東大でも写真をみて、思うところを英語で書かせる問題が出題されています。

 

 

以前であれば、

子どもがこのような問題に対応できるようにするには、どうすればいいのか?

この問題に対する対策だけでなく、もっと根本的に自ら問いをたて、考え続けられる子にしたい‥‥

 

と思いながらも、これ!という具体的な進め方がわからず、悩んでいました。

 

この本を読んだ今なら、

本で紹介されているやり方を、日々の育児のなかで地道に実践していくことで、

✅漠然と見過ごしていたことに対し、立ち止まって「なぜ?」と考える力

✅不確実性の中で自ら課題を見つけていく

✅利害関係のある対立する問題でも、フラットな姿勢で状況を打開する手がかりを探す力

 

こういった未知に対応できる力をつけられると強く確信しています。

 

対話型鑑賞のアプローチを地域づくりに――未来の社会づくりに役立てていくことに大きな可能性を感じています。(p238)

 

著者の鈴木有紀さんは本の最後をこのように締めくくっています。

対話型鑑賞には社会を変える可能性が十分あると私も感じています。

家庭でも取り組んでいけば、子どもの考える力・思考力を伸ばしてあげられると確信しました。

 

シンプルかつ家庭で今日からできる実践方法がわかるのでおすすめです。

教えない授業――美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方

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公開日:2020年5月5日