【レビュー】『理系が得意な子の育て方』【算数の苦手・つまずき対策がわかる】
時代がどう変化しても、子どもに生き抜いてほしく、いろいろな本を読んでいます。
今回ご紹介するのは『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』。
この本を読むと、次のことがわかります。
- 小学生が算数でつまずく3つのポイント
- 対処方法
- 文系でも算数の教育から逃げられない理由
「理系が得意な子の育て方」というタイトルですが、次のタイトルにできるほど、「算数のどこでつまずきやすいか?」にフォーカスした本です。
●算数が得意な子の育て方
●文系でも逃れられない!算数を苦手にさせないための心得3点
●AI時代に絶対必要な算数を得意にする方法
親がつまずきポイントを理解できるだけでなく、子どもに問題を解いてもらって、確認できる充実した内容です。
最終章の4章には、文系でも算数から逃れられない、子育てのヒントとなる重要なおはなしが書かれています。
こんな方におすすめ
●小学生のお子さんをお持ちの方
●算数の点数が上がらずに困っている方
●お子さんの算数の点数が70点前後である方
●「速く解けたね」とよく声をかけている方
●子どもに「ママと同じで〇〇もやっぱり算数苦手だね」と言っている方
※この記事は4分ほどで読めます。記事を読むと、算数問題で子供をサポートするヒントがわかるようになっています。
目次
『理系が得意な子の育て方』からわかる子供が小学校の算数でつまずく3つのポイント
本によると、小学生が算数でつまずくポイントは次の3つにまとめられます。
- 位
- 単位
- 図形
本の冒頭に「位」「単位」「図形」を理解できるか確認するための問題6問が紹介されています。
もし、この単元を習う年齢を過ぎているお子さんが、どれか1問でも間違えた場合、「その問題ができなかった」だけの問題ではなく、「その単元そのものが理解できていない」可能性があります。
確認する手っ取り早い方法が、冒頭の6問を子どもに解いてもらうことです。
子供が間違えた問題が、「位」「単位」「図形」のどれなのか知ることが、つまずきポイントを把握するファーストステップになります。
算数がほかの教科より重要な2つの理由
理由は2つ。
①前から順番に理解していく教科である
②中学受験で差がつくのは算数である
①前から順番に理解していく教科である
前の単元で学んだことを理解している前提で進んでいくのが算数です。
位・単位・図形は後の単元の基礎となるため、この3つのどれかでつまずくと、その後の勉強にも影響が出てしまいます。
算数だけではありません。
たとえば、L、dL、mLなどの「単位」は、数学、物理、化学でも登場する概念です。
算数の「単位」をおろそかにすると、算数の後の単元どころか、他の科目にも影響するわけですね。
②中学受験で差がつくのは算数である
合格平均点と全体平均点の差が最も大きいのが算数というデータがあります。
つまり、中学受験する場合、最も差がつくのが算数ということ。
他の教科にも影響することからも、算数をないがしろにしておくことは、高校レベルの学習にも影響することがわかります。
[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]本にはもう1つ、おそろしいデータが紹介されています。[/word_balloon]
東大現役合格者の偏差値のデータから、小学生のときと高校3年生では、偏差値にほとんど変化がないそうです。
小学校の算数でつまずくと、大学入試にも響いてしまう可能性が高いということです。
本によると、
算数の場合、「たまたま間違える」のは単純な計算ミスだけ。
それ以外の間違いには、何らかの理解不足が潜んでいる。
では、子どもの理解不足に気づいたとき、家庭ではどんな対策を取ればいいのでしょうか?
算数で苦手が見つかった場合の対処法
ポイントは、前の単元に思い切って戻ること!
[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]子供が算数でつまずいたとき、「先取り学習しているから大丈夫」という幻想を親が捨てて、低学年の単元に戻れるかどうかが鍵となります。[/word_balloon]
その時の注意点は、
習う順番で「前」に戻るのではなく、単元の単位で考えること。
つまずきポイントが、
- 位
- 単位
- 図形
のうちどれかを特定し、その単元の「前」に戻る必要があります。
✔子供の苦手箇所がどこかわからない場合はどうすればいい?
この本を使う以外の方法で、苦手な単元を見つける方法として、算数検定が紹介されています。
算数検定と聞くと、「苦手なのに算数検定?」と思われますよね。
算数検定は、子供の苦手や得意がわかるほか、算数の勉強の指針にもできるようです。
[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]日本数学検定協会のホームぺージで、何級が何年生に相当するかを確認できます。[/word_balloon]
『理系が得意な子の育て方』より・小学生が算数でつまずくワースト5と克服方法
第2章以降に、小学生がつまずくワースト5の問題と克服方法が紹介されています。
冒頭で書いた3つのつまずきポイントをさらに細分化したのがこちら。
これはぜひ、本を手に取って、問題を解きながら確認してみてください。
すぐに知りたいという方に向けて、以下、ポイントだけまとめておきます。
【つまずきワースト1】位がわからない・小数
低学年でつまずく子が最も多いのが「位がわからない」。
具体的には、
340+45=?
を790と答えてしまうことです。
「筆算は右端に揃える」と教えてしまう先生がいらっしゃるようですね。
位の概念を理解せず、パターン解法ですませていると、小数が出てきたときについていけなくなってしまいます。
そこにとどめを刺すのが4年生で登場する四捨五入。
「位を理解する大切さ」について、AI研究者の新井紀子先生が『AIに負けない子どもを育てる』の中で、筆算時の注意点について、次のように指摘しています。
あらかじめ桁がそろえて書いてある筆算ドリルは使いすぎてはいけません。ドリルには問題だけが書いてあって、それをノートに写させて、そこで筆算をさせるほうがいいのです。
なぜかというと、筆算の初期のつまずきの多くが「桁をきちんと合わせていないこと」「繰り上がりや繰り下がりを正しい箇所に書かないこと」にあるからです。
小学生はまだ自分をコントロールするスキルが十分に身についていないことが少なくありません。(略)
だからといって、あらかじめ桁を合わせた問題をドリルの上で解かせては、中学に上がったときに真っ白な計算用紙で自力で計算できません。
『AIに負けない子どもを育てる』p188より引用
これは、小学校の成績がいいのに、中学校進学後の成績が芳しくない富山県立山町の事例で、小学校の先生による熱心な親切すぎるプリントが背景にあったことに関するコメントです。
新井さんの指摘からも、「位」のつまずきが後の勉強に影響することがわかります。
子供が「位」でつまずいている場合は、位の概念がわかるまで、低学年のうちに問題を解いておく必要があります。
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「位がわからない」苦手克服方法
✔お金を使う
1円は一の位、10円は十の位、100円は百の位など、数字を紙に書いて、子供に数字分のお金を並べてもらって概念に慣れてもらいます。
買い物で300円で買えるお菓子を選んでもらうのもいいですね。
✔3Dブロックを使う
これは私のアイディアです。
このようなブロックを3Dプリンタで作って、遊び感覚で慣れてもらうこともできますね。
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【つまずきワースト2】図形の組み立て
ワースト2は図形。
図形でつまずく背景には次の2つの理由があります。
①小学校の授業がとびとびであること。
②具体物を使っていない
2次元の図形が2次元にしか見えず、どうやっても3次元に見えないという子供は結構いるとのこと。
ということは、連続学習にして(間を開けない)、具体物を使って学習すればいいですよね。
[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]
大人からすると、「え、なんでこれがわからないの?」となりがちですが、
平面図形が立体に見えない子がいる事実を認識するのが大切だと思います。
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「図形」苦手克服方法
✔1回は図形を実物で触る
ティッシュ箱、おもちゃのブロックなど、実物を触る必要があります。
取り組みやすいものとしては、ロボット教室がおすすめです。
息子はロボット教室に通い始めてから、毎日、教材のパズルに取り組むようになりました。
試行錯誤を何度も繰り返しますので、とてもおすすめです。
▼無料で体験できるだけでなく、ブロックももらえました。
✔いらない箱を展開する
展開図と組み立てられた立体をリンクさせるために、いらない箱を子どもと一緒に展開するのもいいですね。一番身近なのは、ティッシュ箱でしょうか。
昔あったキャラメルサイコロもいいですね。
✔間を開けない
図形をやる授業がとびとびなのが一番の問題であると、筆者は指摘しています。
これは家庭学習のヒントになりますね。学校でやらないなら、家庭で間を開けずにやることができます。
【つまずきワースト3】単位・目盛りの読み方
目盛りと単位は、「位」の概念も関係します。
1つの目盛りが1だと覚えてしまうと、1つの目盛りが10や100の場合に混乱してしまいますよね。
「単位・目盛り」苦手克服方法
目盛りでも、実物を使うのが有効です。
ペットボトル、計量カップなど、お手伝いの一環で家庭でできますね。
幼児期から算数を得意にするために何かされたい場合は、料理がおすすめです。
それが唯一可能な通信教材と、料理が有効な理由はこちらに詳しく書いています。
【つまずきワースト4】文章題
計算力だけでは解けないのが文章題。
文章題に取り組むとき、次の3つのプロセスに分けて考えます。
- 問題を読んで理解する
- 式を立てる
- 解く
実はこれ、仕事などでも必要なプロセスですよね。
- 現状を把握する
- 方法を考える
- 解決する
算数の文章問題にじっくり取り組むことは、ほかの問題に対応する思考力のベースとなるわけですね。
筆者は、文章題こそ考える力の土台になると書いています。
計算練習で「解く」ことには対応できますが、「問題を理解する」「式を立てる」には対応できません。
まず文章をじっくり読んで、式を立てることが大切とされています。
「文章題」苦手克服方法
✔問題を音読させる
本によると、簡単かつ一番効果がある方法がこれ。
✔親が速く解くことに価値を置かない
これは意外な盲点。
家庭で勉強をみるときに、「速くできたことを褒める」「勉強中に手がとまっていたら、つい声をかけてしまう」などやりがちですよね。
しかし、こうした行為によって、子供が「速く解く方がよい」と思い込んでしまいがちとのこと。
詳しい対策や根本的な解決方法はこちらに書いています。
【つまずきワースト5】円と半径・直径
「なぜできない!?」と親がショックを受けることが多いのが円の問題。
大人からすると、とても簡単に見えるけど、子供が間違えやすい問題が載っています。
こういう傾向を知っておくことで、親が余計に不安になったり、「こんなこともできないの?」と子どもを責めたりすることを回避できるので、目からウロコでした。
[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]本には大人からするととても簡単ですが、間違える子どもが多い問題が載っています。[/word_balloon]
「円の問題」苦手克服方法
✔1問につき1分以上はしっかり考えて、自分で解く
✔具体物を使う
直径と半径の問題が苦手な場合は、四角形と三角形の組み合わせの問題に戻るのが◎。
円そのものが苦手なわけではなく、図形の組み合わせが苦手な可能性もあるということですね。
[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]
ここまで、ワースト5と苦手克服方法を見てきました。
問題を直接見る方がヒントになりますので、子どもに本の問題にチャレンジしてもらってください。
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苦手克服方法はわかったけど、算数を得意にする方法や秘訣はないの?と気になる方は、こちらの記事をご覧ください。
理数系学習塾エルカミノの村上先生おすすめの「子どもを算数得意にさせる秘訣」を本をもとに解説しています。
『理系が得意な子の育て方』を読んだ結論!算数でつまずくポイントは、親が見つけてあげられる
この本を読むことで、家庭で子どものつまずきポイントに気づいてあげられると思いました。
とくに、間違えやすい問題が豊富に紹介されているので、大人にとっての当たり前と、子どもにとっての難しさの「差」をイメージできました。
ただ、サポートする立場の親が、無意識でやってしまいがちな「やる気をそぐ言葉」には要注意です。
●お母さんは文系だし、算数苦手だったからな~
●お母さんの出来が悪くてごめんね
●うちの子は本当に出来が悪くて
●あ~、ママと同じで〇〇もやっぱり算数苦手だね
●うちの子は算数が苦手なんですが、、
こういう言葉は、遺伝うんぬんよりも、子どもに悪影響しか与えないためNGと書かれています。
なにより、子どものやる気をそぎ、かつ、成績が上がらないことの口実になってしまいます。
ママ友との会話で、謙遜言葉として使ってしまいがちですが、そばで聞いている子供は「言葉通り」に受け取るので要注意です。
[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]ここまで読んで、「うちの子は算数で70点取っているから安心よ」と思われた方は、もう少しお付き合いください。[/word_balloon]
小学校算数の点数がよくても安心できない理由
本によると、小学校の算数は、完全に理解できていなくてもテストでそこそこの点がとれてしまうので、70点は安心材料にはなりません。
筆者は、70点より30点のほうがいいと断言しています。
30点がいいのは、本人も周りも「理解できていないこと」を認識できるから。
逆に70点だと、特に大きな問題なしと見過ごされてしまいます。
[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]実際は、何かの単元に理解不足があるのに、他の問題でカバーしていることが考えられます。[/word_balloon]
90点を切ったら、十分に理解できているとはいえないので、黄色信号。
どこでつまずいているか、算数検定や、この本にある問題で見つけてあげる必要がありますね。
本の最後には、文系でも算数から逃げられない理由が将来の仕事事情とあわせて書かれています。
全体に占める割合は小さいですが、重要です。
仕事にありつけない大人にさせないためにも、小学生からの算数の教育は必須中の必須ということですね。
ちなみに、著者が開発したRISU算数というタブレット教材に興味がある方はこちらをご覧ください。
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