【テクノロジーが変える教育の未来】『Appleのデジタル教育-スティーブン・ジョブズが子供に学ばせたかった』【感想】

スマートフォンやタブレットを子どもにどのように使用させればいいんだろう?

子どもの勉強に対するモチベーションを上げるにはどうすればいいんだろう?

授業でどのようにテクノロジーを活用していけばいいのだろうか?

 

こんな悩みや不安をお持ちの親御さん・教員の方に、この本を自信をもっておすすめします。

Appleのデジタル教育

Appleのデジタル教育

ジョン・カウチ, ジェイソン・タウン
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私はこの本を読んで、教育におけるテクノロジーの持つ可能性に身震いしました。

弊害があると敬遠しがちなテクノロジーについて、活用レベルを上げれば、生徒や子供のやる気をアップさせ、学びのプロセスそのものを変えられる可能性があることがわかりました。

 

本でもっとも印象的だった言葉は、学習プロセスを生徒に関連付けること

学習プロセスを生徒に関連すければ、生徒のモチベーションはあがり、学習に夢中になり、教育のあり方が一変します。

これらを可能にするのがテクノロジー。

テクノロジーを上手に活用すれば、どんなに退屈なテーマでも、学習を生徒に関連付けられることが書かれています。

2020年に読んでよかった本、これからも再読したい1冊です。

生徒に関連性をもたせることの重要性

「Appleのデジタル教育」で何度も出てきた言葉が、

新しいことを学ぶとき、生徒に関連づけることの重要性。

新しいことを学んだとき、すぐに理解できる人とすぐに理解できない人がいますよね。

すぐに理解できる人は、新しい事柄を自分が経験したことに関連付けて理解するため、新しいことを理解しやすいです。

 

このことは、スタンフォード大学が小学校低学年と高学年の子に同じ算数の問題を解いてもらい、アプローチの仕方を比較した実験でも示されています。

実験で、低学年の子は頼りにできる記憶がないため、指で数えるなど使えるものを駆使して問題を解こうとするのに対し、高学年の子は記憶をたどって事実を引き出そうとしていたことがわかっています。

 

何か新しいことに遭遇したとき、脳はそれを理解するのに役立つ情報を探しているということですね。

つまり、暗記させるよう促すのではなく、

新しいことと、生徒がすでに知っていること・経験していることを結びつける方法を探す方が良いことになります。

 

では、生徒に関連性を持たせる授業は具体的にどんなものでしょうか?

筆者は、

授業で扱うテーマそのものに生徒との関連性を持たせることは必ずしも必要ない

大事なのはテーマの取り上げ方だ。

適切な取り上げ方をすれば、どんなに退屈なテーマも新鮮で刺激的になる

と断言します。

 

ここで登場するツールがテクノロジーです。

教育にテクノロジーを活用する方法

デジタルネイティブの子どもたちにとって、身近なものはインターネット、Twitter、YouTube。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]これらのテクノロジーを使って、退屈な授業を一変させた面白い事例が紹介されています。[/word_balloon]

 

高校教師のラリー・ライフは、シェイクスピアの教え方を180度変えました。

シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』を教えるとき、ラリーは授業全体でテクノロジーを活用しています。

具体的には、

・グループ分けして、ロミオとジュリエットの短編動画を制作させる。

・動画制作では声の抑揚、効果音なども工夫させる。

・クラス全員で完成した動画を鑑賞し、議論を交わす

・2人の監督によるロミオとジュリエットを生徒に見せて、シーンの違いについて議論させる

・ロミオとジュリエットの時代にTwitterがあったと仮定して、二人が駆け落ち計画をどうやりとりするか、Twitterに#タグをつけて投稿させる

 

戯曲の理解に、動画、映画、SNSという現代のツールをふんだんに活用していますね。

このように、テーマそのものを生徒に関連づけるのではなく、テーマの取り上げ方を生徒に関連づけることで、退屈なテーマも新鮮で没頭できるものに変わることがわかります。

つまり、大切なのは学習プロセスに生徒との関連性を持たせること

 

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]関連づけるのがテーマではなく学習プロセスでよければ、デジタルネイティブにとって身近なTwitter、YouTube、ブログ、スマホ、動画、AR、3Dプリンタなど、使えるものはたくさんありますね。[/word_balloon]

 

この事例にはたくさんのヒントがあります。

テクノロジーを使って退屈なテーマを取り組みたくなるものに変え、生徒を夢中にさせる事例はほかにもあるはずです。

プログラミングで関ヶ原の戦いを再現したゲームをつくる

地図を3Dプリントして地震の多いエリアに色を塗るなど。

 

 

しかし、こんな声もあるかもしれません。

生徒と関連性をもたせる教育方法はすばらしいけど、テストで得点をとることを求められる現状では、実践が難しいのでは?

それを可能とするもう1つの事例が紹介されています。

 

テクノロジーは生徒の学習体験を一変させる

本でとても面白い事例が紹介されています。

歴史に興味のない生徒も、参加したら楽しくなってしまうような事例です。

 

カリフォルニア州の歴史を学ぶ授業の例

あなたはカリフォルニア出身の新聞王として有名なウィリアム・ランドルフ・ハースト。

あなたがサン・シメオン丘に彼が建てた豪邸で晩餐会を開き、カリフォルニア州の歴史に大きな影響を与えた人々を招待することになった。

誰を招待し、誰を招待しない?

 

誰を招待して、誰を招待しないか?

これは根拠を見つけないといけないため、調査の過程でカリフォルニアの歴史を学ぶことになります。

インターネットに限らず、図書館や博物館に行くことも考えられます。

課題を解決するためには、暗記で終わらすのではなく、本質をとらえた勉強が必要になります。

 

晩餐会で繰り広げられる会話の台本を作成して、ショートムービーを作れば、学習プロセスをさらに生徒に関連付けることができます。

招待した人の席を決める課題を加えることもできます。

誰がどこに座るかを決めるためには、招待される人ひとりひとりについて、本質的な理解が求められます。

課題に取り組みながら、生徒はカリフォルニアの歴史について本質的な問いを自ら設定し、解答にたどりつきます。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”true” balloon_shadow=”true”]教科書や既存の動画で学ぶより、ずっとずっと主体的で、より楽しい授業になりますよね。

しかも、頭に残ります。[/word_balloon]

 

以上の2つの例より、テクノロジーを活用するポイントが、

学習体験そのものを変え生徒のモチベーションを高めることだとわかります。

 

筆者は、テクノロジーを教室に導入する目的として、

①効率を上げる

②効果を少し改善する

③学習体験そのものを変える

 

の3つを挙げていますが、現状は、①②に終始していることが多いです。

いまの子どもたちはデジタルネイティブテクノロジーは日常にある当たり前のもの

教育を変えるためには、テクノロジーを十分に理解しきれていない教師や親が、テクノロジーの活用レベルを上げなければならないというのが筆者の主張です。

テクノロジーの活用レベルを教師が上げなければ、③の学習プロセスそのものを変えることは難しく、残念な活用方法で終始してしまいます。

 

筆者はテクノロジーを教育に上手に活用することを推奨していますが、

もう1つ、あらゆる年齢の子どもたちに教えるべきものとして、プログラミングも推奨しています。

プログラミングで大切なのは言語ではない

筆者は、プログラミングはあらゆる年齢の子ども達に教えるべき最優先事項のひとつだとしています。

プログラミングを学ぶと、

・自信がつきモチベーションがあがる

・違う分野で成功する可能性が広がる

・論理的思考力・問題解決能力が身につく

・高給職につきやすくなる

といったメリットがあるからです。

 

ここで注意が必要なのは、重要なのはのプログラミング言語を学ぶかではなく、言語を学習するプロセスということ。

プログラミングの仕組みさえ理解すれば、ほかの言語を学ぶときにも活かせますし、プログラミングで学んだ思考プロセスを他分野にも応用できるからです。

どの言語を学ぶかよりも、学び方が大切ということですね。

 

プログラムによって人物が動くことに感動して自分に自信がついたり、

どうコーディングすれば望む結果が得られるか考えることで論理的思考力が身についたりすることが期待されます。

 

プログラミングの開始年齢については、

算数のようになるべく早い段階で教えるべきで、コーディングのざっくりした考え方なら、幼稚園からでも早すぎるということはない

というのが筆者の主張です。

しかし、プログラミング教育が進んでいると思われるアメリカにおいても、全州で高校の必修科目とはなっておらず、一部の州で、必修科目に「デジタルリタラシー」が加わったという段階のようです。

 

日本では2020年度から小学校でプログラミング教育が必修になりますが、プログラミング科目ができるわけではありません。

学校教育の中にプログラミングが追加されるイメージに近く、専用の授業や科目が追加されるわけではありません。

デジタルネイティブのニーズに応えられるようになるにはまだ時間がかかりそうです。

教育現場も親もリテラシーがまだ十分でない現状において、テクノロジーが教育にもたらす可能性について大人の理解の穴を埋める1冊として、大変参考になる本でした。

テクノロジーを組み合わせて学ぶことにワクワクしてくると思います。

 

  • タブレットやスマホの活用に不安のある方
  • 子ども・生徒のモチベーションの上げ方に悩んでいる方
  • 授業でテクノロジーをどのように活用したらいいかわからない方

 

このように考えている方には特におすすめです。

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公開日:2020年2月23日